人類は衰退しました 未確認生物スペシャル
小学館eBooks〈立ち読み版〉
人類は衰退しました
未確認生物スペシャル
田中ロミオ
イラスト 戸部 淑
目次
ひみつのおちゃかいのそのご
じしょう未来人さんについてのおぼえがき
星の銀貨
ブレーメンの音楽隊
ヘンゼルとグレーテル
トロールハンターさんの、ゆかいなしゅりょうせいかつ
よるのぼくじょうものがたり
看板の竜
あとがき
ひみつのおちゃかいのそのご
道ばたで豆本を拾ったのです。
豆本ってご存じでしょうか? その名の通り、てのひらにおさまる程度の小さな本のことを言います。
単なる形容ではなく、こういったひとつの文化です。
実際に読むには不便ですがね。まあ、いいもんですよ。こういうものはね。
古風な革で装丁された、小さな本。
小さな文字を目を凝らして読んでいくと、数年をまたいで甦った記憶とともに深い衝撃を受けました。世の中とはなんとエキサイティングであることか。
その記憶は《学舎》の四級生だった頃の出来事なのですがね。
ようござんす(助手さんの話し方が少しうつっている)。
お話しいたしましょう。
「我々、のばら会の目的は何かしら?」
〈花先輩〉がテーブルの向こうから、意味深な問いを投げかけてきました。
彼女は《学舎》伝統の秘密倶ク楽ラ部ブのばら会の代表。ひとつ年上の五級生。
のばら会は秘密倶楽部。
誰もが入れるわけではないはずなのですが、なぜかわたしはあっさり加入を認められました。他に居場所もあるわけでなし、最近和解した悪友Yとともになんとはなしに入り浸っている現状です。
「妖精のお茶会を探すことでは?」
わたしの答えに、先輩は静かに頭を振ります。
「ノンノンノン。確かにそれは倶楽部の最終目的ではあるけれど、それだけではないのね」
「では、メンバー同士の交流を深めること?」
「イエス。さてそのためには何が必要かしら?」
「……お茶とお菓子でしょうかね」
要するに遠回しな催促かしらん、と結論しかかったわたしの前に、先輩は冊子を放り出します。
「もちろんそれらも大切なのだけど、今日の本題はこれね」
手作りの小冊子。題字には『のばらだより』とありますが。
「のばら会の文集?」
「正解」
こんなものを作っていたとは知りませんでした。ぺらぺらめくっていきます