R.O.D ―第十二巻―
R.O.D ―第十二巻―
倉田英之
スタジオオルフェ
この本は縦書きでレイアウトされています。
CONTENTS
序章
第一章 『毟りあい』
第二章 『圧倒的なスタイル』
第三章 『紙果つる地にて』
終章
【電子版オリジナル特典】
スペシャル書き下ろしイラスト Presented by 羽音たらく
イラストレーション/羽音たらく
R.O.D
READ OR DIE
YOMIKO READMANTHE PAPER
――第十二巻――
私は本を愛している。
だが、本は私を愛しているだろうか?
序章
菫川ねねねは考えている。
自分が見たものは、いったい何なのか。
頭の中を整理しよう。自分は行方不明になっている元担任教師へ、恋人だったドニー・ナカジマの日記帳を渡すために、大英図書館特殊工作部のウェンディ・イアハートを同行させ、彼女の幼なじみにしてインドの大富豪シャールクが運転するカートに乗り込み、エベレストの地底にあるトンネルの中を走っている。……この時点でもう、頭の中は足の踏み場もないほど散らかってしまっているのだが。
一時間半ほど前だろうか、暗く険しいトンネルの途中で、シャールクが「サービスエリアだ」と呼ぶ場所に出た。走りながら傾き、揺れ、弾む車体の中で「二十四時間ジェットコースターに乗ってたような気分」になっていたねねねとウェンディにとって、それは感謝このうえない休息だった。あと数分でも到着が遅れていれば、ねねねは世界の遺産たるエベレストの中で、はしたなく嘔吐していたかもしれない。
しかしねねねは、次の瞬間にここまでの道程よりもずっとずっと激しく、頭を揺さぶられることになった。「上を見てごらん」というシャールクの言葉で、素直に顔を上げると、そこには巨人、ドラゴン、恐竜、雪男、古今東西の〝想像上の生物〟、あるいは〝かつていた生き物〟の彫像があったのである。安手のファンタジー映画やコンビニで売られているUMA本に現れそうな生き物が、ところ狭しとひしめいていた。それは明らかに人の手によるもので、誰がそれを造ったのか、なぜこんな場所にあるのか、あらゆる意味で謎だらけな景観だったが、最もねねねの目を引いたのは、幻獣たちの中でも一際異彩を放つ人間の姿であった。
顔に眼鏡。
手には本。
そして周囲