吉祥 GOOD☆LOOKS
小学館eBooks〈立ち読み版〉
吉祥GOOD☆LOOKS
若王子ラムネ
イラスト とりしも
目次
序章
第1章 占い少女あたる、吉祥寺に現る!
第2章 美少女あたるの秘密
第3章 ピンチはチャンス
第4章 誕生!! 吉祥GOOD☆ LOOKS
第5章 ナインはひとりのために!
第6章 あたるもハッケ!
終章
あとがき
渋谷から京王井の頭線の急行で十七分、JRだと新宿から中央線快速で十五分の吉祥寺駅。二〇〇八年四月六日午前七時三十二分、通勤通学客でごった返す構内からどんどん人が出てきて、出てきた人はみんな足早にそれぞれの目的地へと歩き去っていく。そして、その人たちとは反対の人の流れがどんどん駅に吸い込まれていく。
吉祥寺といえば、戦後のヤミ市時代の面影を残す店がならぶ路地や、古典的なデパートから普通にファミレス、ファーストフード、家電量販店までそろっているうえに、都心では見かけなくなった筋金入りの名画座もあれば、こじゃれたブティックやアウトドア専門店、雑誌によく紹介されるエスニック料理店に、坪庭のあるカフェやこだわりの絵本屋さんなどもある。しかも井の頭公園も擁しているから、駅からちょっと離れると閑静な住宅街で、庶民的なぬくもりとちょっとカルチャーを感じさせる東京郊外でも有数の人気の街なのだ。
桜も開花し(駅前に桜の木はないけど。でも、テレビでも毎日開花情報流してるし、日本民族は〝桜の季節〟というだけで、なんかスイッチ入るでしょう。なんのスイッチだかわからないけれど)、〝新年度〟の初々しさ、緊張感、高揚感などがまじってちょっぴり、歩く人たちのメンタルバランスがハイ気味なことをのぞけば、いつもどおりの粛々とした朝の調和のとれた風景。
──のはずだった。
「ヤッタ─────ッ!」
駅の改札口から颯爽と現れたわたしは両手を天に向かって突き上げながら、思いっきり叫んだのだから。
もちろん、わたしは、〝日常〟から逸脱したこの行為が、周囲の人たちの注目を集めるだろうことを頭の隅っこで理解していた。思ったとおり、みんながいっせいに振り向いたけれど、開放指数が正常値を超えて増幅していたわたしの感性はその程度で動じることはなかった。ましてや、まったく反応しないツワモノ(とヘッドフォンからシャカシャカ音漏らしてるヤツら)も意外にいること