アキバタリアン 千の屍、夏、終わりの#
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イラスト/夕ゆー薙
デザイン/下山隆・菅原啓人(RedRooster)
水ミズ谷タニ綾アヤ香カは16歳、牡羊座A型、云うまでもなくクラスいちの女の子だ。異論なし。けれども美少女か、と問われれば疑問符をつけたい。その言葉には、未熟さ、完成することなく、あとは失われるだけの儚さが付帯されるべきで、彼女の性的魅力とは相反するものだから。
ぷっくりした唇、長い睫、ぱっちりしたアーモンド形の目、白い肌、外国人体型スタイル……あの春、ハレの入学式の日、男子一同は運命に感謝した。わが校に自慢の屋内プールがあったこと。水泳の授業が男女いっしょであること。
そうして空梅雨と記録的な日照り、ダムの貯水率に一喜一憂して、入道雲がそそりたつ心の窓に、てるてる坊主を逆さまに吊るして、水着のない体育の授業に絶望した。
夏休みの思い出は、これといって。
9月。
授業が再開されて、夏は終わろうとしている。なのに暑さだけがウジウジとつづいていた。
けだるい。
クラスメイトの名誉のためにつけくわえると、水谷カノジヨは下品ビツチじゃない。成績は上位で、期末考査では掲示板に名前を貼りだされた。帰国子女で語学堪能。気むずかしい英語担当の城ジヨーも、彼女はお気に入りで、やっかいな質問は、残念な男子どもを生け贄の仔羊にしたあと、かならず彼女にふる。
1-5は水谷カノジヨのための舞台ステージ。
悪目立ちしがちなのは大人たちの責任だ。おっさん殺しで教師ウケがいいから。
たぶん彼女は、たいていの高校1年生がうらやむものを生まれつき持っていて、だから自己主張は即、羨望からくる僻み、僻みからくる羨望の的たるわけだが、それに臆することなく、さらによいものを得ることに貪欲だった。
休み時間のたび行事イベントのたび、水谷綾香を囲むのは上流階級の女子たちだ。海外の学園ドラマみたいな女王クイーン・ビーとトリマキサイドキツクス。部活は演劇部だが、狭小なグラウンドの関係で野球、サッカーといった花形球技部が存在しないわが校では、芸術系クラブのステータスは低くない。
ざっくばらんに云って、そう彼女はエロ賢い女子アナってところ。
文化祭のコンテストで準ミスに選ばれたことで、知名度は全学年で高まっている。
そ