魔装学園H×H9
魔装学園H×Hハイブリツド・ハート9
【電子特別版】
久慈マサムネ
角川スニーカー文庫
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本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
目次
序章
一章:オシリス
二章:死者の都
三章:S&M
四章:創造主と創造物
あとがき
特別短編
再インストール IN 温泉旅館スペシャル
電子特別短編
『ゼルシオーネの葛藤』
そこは砂漠の中のオアシス。
大河のほとりに緑が広がり、人々が集まり、街が作られた。そんな成り立ちを想像させる街だった。
街の外周に壁はなく、背の高い木が植えられ、ゆるやかに街が始まっている。警戒しなければならない外敵など存在しないのだろう。まぶしい太陽の光を反射して、ベージュ色のレンガと石で造られた建物が連なっている。
「……あれか」
フード付きのマントをまとった少女が、その街を見つめていた。砂の上に立ち、まぶしい日差しを避けるようにフードを深く下げる。
四角いブロックを積み上げたような建物だ。大体、二階か三階くらいのものが多く、それほど背の高い街ではない。それ故に、街の外れにある巨大な建造物の存在感は異様ですらあった。
石を積み上げて造られた、巨大な四角錐。いわゆるピラミッドだった。
その高さはおよそ三百メートル。
一体何の為に造られ、どういう役割を担っているのかは分からない。しかし、霞のかかった巨大建造物は、その得体の知れなさがそうさせるのであろう、見る者に言いしれぬ畏怖の念を抱かせた。
そのピラミッドを睨むように見つめると、少女は砂に足跡を残しながら歩き始めた。マントの裾をひるがえし、単身砂漠の街に入ってゆく。
防風林のような木々を抜け街の中へ入ると、実に整然とした街並みが広がっていた。綺麗に削られた石を積み上げた建物が、きっちりと道の両側に並んでいる。大通りに面しているのは商店のようだ。看板と広い間口、中にはカウンターや棚も見える。道は全て石畳で、砂漠から吹き込んだ砂が風に吹かれて、さらさらと流れていた。
一見、砂漠の中のよくある街の風情だ。
だが唯一、明らかに不気味なものがあった。
それは、この街の住人だ。
果たして、人間と呼んで良