后退 返回首页
作者:十文字青,白井鋭利
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-08-25(overlap)
价格:¥590 原版
文库:overlap文库
丛书:灰と幻想のグリムガル(9)
代购:lumagic.taobao.com
灰と幻想のグリムガル level.9 ここにいる今、遥か遠くへ イラスト/白井鋭利  右手を握る。  開く。  もう一度、握る。  この手でやったんだ。――と、ハルヒロはあらためて思う。  仲間を傷つけた。いいや、違う。  もう仲間じゃない。 「……ランタ」  呟くと、胸の奥が苦くなる。そんなところに味を感じる機能なんて備わっていないはずだ。それなのに、間違いなく苦い。肋骨が締めつけられているかのように狭まり、軋んで、鈍い痛みを覚える。――ランタ。ランタのやつ。ランタめ。クソランタ。  あいつの背後をとって、その右肩に錐状短剣ステイレツトを突き立てた。あのときの感触はもう残っていない。それくらい普通だった、ということだ。いつものように、――あたりまえみたいに、ハルヒロは錐状短剣ステイレツトをやつに突き刺した。少なくとも、あの一刺しはまったく躊躇しなかった。ためらったりしたら、たぶん逆にやられていた。  あいつは本気だった。そう見えた。ハルヒロにはそうとしか思えなかった。  強かった。あいつの安息剣RIPerは鋭くて、意外なほど重かった。見くびっていたのか。そうかもしれない。あいつの剣を受けたことなんてなかったし。ただ近くで見ていただけで。素早いことはわかっていた。あいつは速くなった。昔とは違う。一匹のゴブリンに手間どっていたころと比べたら別人だ。それはべつにあいつだけじゃないけれど。みんな成長した。ハルヒロだってそうだ。でも、やっぱり侮っていたのではないか。  あいつがどれだけ強くなっているか、ハルヒロは把握していなかったんじゃないか。  ちゃんとわかっていたら、もっと対処のしようがあった、――かもしれない。あんなことをしなくてもすんだんじゃないのか?  あいつを殺そうとした。  もう少しで兜の目穴に錐状短剣ステイレツトをぶちこむところだった。 「ハル」  声をかけられて、はっとした。左に目を向けると、メリイが眉根を寄せてハルヒロを見つめていた。――あのときも。そうだ。あのときもメリイに「ハル……!」と名を呼ばれ、すんでのところで思いとどまった。「だめ……!」と、メリイはハルヒロを疑いなく明確に制止した。止めてくれた。 「うん」ハルヒロはうつむいた。「……何? どうかした?」  メリイは何か言いかけて、――だけれど結局、吐息をもらしただけだった。  外は、雨。  ハルヒロとメリイは洞窟の