異世界君主生活 ~読書しているだけで国家繁栄~
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Contents
第一話 日本人、異世界に立つ
第二話 ラーメン・イン・異世界
第三話 幼馴染は冒険者
第四話 騎士団と日本刀
第五話 紙幣を作ろう!
第六話 プリンセス襲来
第七話 とある日本人の伝説
ダッシュエックス文庫DIGITAL
異世界君主生活
~読書しているだけで国家繁栄~
須崎正太郎
第一話 日本人、異世界に立つ
本好きの青年と異世界
近年、日本文化が海外で注目されているらしい。
能や歌舞伎や茶道などはもちろん、マンガやアニメやゲームなどのサブカルチャーも評価を得ている。さらにある国では、日本についての知識を競うクイズ番組まで放送され、たいへんな人気を博している――
と、いま読んでいる本に書かれてある。
(その番組、俺も出演できないかなあ……)
新堂直人は、図書館の片隅で、ページをめくりつつそう思った。
彼は読書好きで、その中でも日本文学や日本史、日本古来の文化に関する本など、二十歳の若者にしては珍しいほど、日本関係の書籍を特に好んで読んでいる。日本に関するクイズ番組ならば、活躍できるかもしれないと考えたのだ。
(もっとも外国に行く余裕なんて、微塵もないんだけど)
ズボンに入っている、薄い財布をそっと触る。財布の中にはほとんど金が残っていない。そこでふと、直人は現実を思い出した。
今月のアパート代、まだ払ってなかった。どうしよう。
「金がない。だけど労働もしたくない、と……」
と、直人は独りごちながら歩く。
図書館からの帰り道。商店街のド真ん中。食べ物やらなんやらが入ったビニール袋を提げて、とぼとぼと家路についている。
歩きながら考える。どうして自分は、こんな苦境に陥っているのだろう。
大学に進めなかったせいか?
社交が苦手で、就職活動をしなかったせいか?
働きもせず家で読書ばかりしていたら、実家を叩き出されたせいか?
子供のころからひたすら本を読んでばかりで、相談できる友達を作らなかったせいか?
学業以上に顔面の偏差値が低かったせいで彼女もおらず――
「やめよう、悲しくなってきた。ううう……」
直人はかぶりを振って考えるのをやめた。特に最後なんて、努力じゃどうしようもないじゃないか。俺だって、せめてもう少しイケ