異世界迷宮の最深部を目指そう 7
目次
1.心温まる楽しい楽しい船旅
2.パーティーの成長
3.軋み
4.休日の終わり
イラスト/鵜飼沙樹
1.心温まる楽しい楽しい船旅
船の甲板にて、肺が一杯になるまで空気を吸い込んでいく。鼻腔をくすぐる海の匂いが爽やかだ。前髪をさらって吹き流れる潮風が心地よい。
空を見上げれば、どこまでも青色が広がっている。
その快晴の空の中央には、真っ白な太陽が放射線状に光のレースを広げて輝いている。さらに丸い日輪が空に大きく一つ――海に反射して小さく十余り、輝き乱れている。
水平線まで続く大海原は、空よりも少し薄い青色だ。水色よりは濃くて、青色よりは薄い……空色とは違う綺麗な海の色。その海のキャンバスの中には、まばらに濃い藍色も不規則に塗られている。おそらく、海の深さによって色が変化しているのだろう。自然界にしかない芸術を超えた色遣いだ。
銀色の魚が海面を跳ねる。
遠い空で白い鳥が羽ばたく。
静かな小波の音に重なって、海上の音楽が鳴り響く。
目を瞑って僕は、その極上の音楽をゆっくりと耳にする。
ああ、本当に安らかな音楽だ。
心の底から、そう思う。
思うが……しかし、僕の胸中は穏やかではない。
この快晴の空とは正反対の暗雲が、心の中に満ちている。
「ハァ……。ぁあ……」
思わず、溜め息とうめき声が漏れるほどだ。
不安になるような速度で心臓が脈打つ。
息苦しさと共に、口内炎が痛む。
心なしか肌が荒れてきたような気がする。
目のくまの濃さが深まり、疲れを隠せていない。
「胃が痛い……」
心の底からの一言を、僕は綺麗な青い空に向かって呟く。
そして、よろめきながら甲板にある木製の手すりにもたれかかる。ろくに睡眠がとれなかったせいで、身体がふらついていた。
もちろん、連合国から本土に向かう航海は順調だ。
『舞闘大会』にて優勝し、三十層の守護者ガーデイアンだったローウェンを見送り、魔石船『リヴィングレジェンド号』を入手して、追っ手を振り切り、海で遭難することもなく、真っ直ぐ西へ向かっている。
本当に順風満帆と言っていいだろう。
ただ、順当な航海とは対照的に、酷く僕は疲弊しきっている。
心底から疲れた。
いますぐ手すりを乗り越えて、入水したくなるくらい憂鬱だ。
――なぜ、僕