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作者:柳野かなた,輪くすさが
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-07-25(overlap)
价格:¥700 原版
文库:overlap文库
丛书:最果てのパラディン(2)
代购:lumagic.taobao.com
最果てのパラディンII 獣の森の射手 目次 序章 一章 二章 三章 四章 五章 終章  薄曇りの太陽は西の空にあったけれど、見上げてみても暖かさは感じなかった。  流石に凍傷を心配するほどではないけれど、じわじわと染みるような寒さは、地味に辛い。  神殿に居た時から分かっていたけれど、この辺りの気候は寒い時期でも雪がまれに降り、軽く積もる程度だ。今もえらく冷えるだけで、雪の気配などかけらもない。  マントをかき寄せて、ひたすら石畳の街道沿いの土の上を歩く。石畳は既に経年劣化で凸凹だらけだ。下手に道の上を歩くと、足を取られそうで逆に危ない。 「うー……寒いなぁ」  ――吐く息が、ふわりと白い。  やはり常識的な観点からして、冬に出発は失敗だっただろうか、と思う。  ……僕、ウィリアム・G・マリーブラッドは、両親の魂をかけたあの不死神との決戦の後、ほんの数日で神殿を出立していた。  決戦は冬至の日だった。つまりまだ、冬のさなか。……正直、あんまり賢い行いではないと自分でも思う。  けれど……マリーとブラッドのお墓を造って、葬儀を済ませて。その後、あの居心地のいい神殿で春を待っていたら、僕はあそこに居続けてしまいたくなるんじゃないだろうか。マリーとブラッドのお墓を守って。ガスを説得して、ずっとあの街に封じられた悪魔デーモンたちの《上王》の、封印の守護者として生きてゆく。  それは僕にとって、いけないと知りつつ、どこか抗いがたい魅力のある考えだった。  でも、家族の緩やかな許容のもとに引きこもるという行為は、前世と同じだ。……何も行動しないで、足を止めていたら、この考えはきっと膨らんでしまう。  だから――悩まず信じて、前に出る。 「…………」  とはいえ勿論、気候にやられて野垂れ死にだけはしないように十分注意している。最悪、いったん神殿に引き返すことも考慮に入れているくらいだ。  ……格好つけて出てきたのでガスには笑われそうだけれど、もし引き返すことになったとしても落ち込むことはない。予備調査だったと思えばいいのだ。道の状況や野営に使える場所なんかを確かめておいて、改めて春に出発すればいい。閉じこもって何もしないでいるより、その方がずっと有益だ。  というわけで、寒さをこらえつつ旅荷物を担いで、時に歩き、時に小休止を挟み、夜になったら野営をしながらひたすら歩く。