どうでもいい 世界なんて―クオリディア·コード―
小学館eBooks
どうでもいい 世界なんて
渡航(Speakeasy)
イラスト saitom
目次
1/いつか自宅へ帰るために QUALIDEA CODE-CHIBA
2/そんな仕事は辞めてしまえ QUALIDEA CODE-CHIBA
3/兄と妹エトセトラ QUALIDEA CODE-CHIBA
4/あいつが世界を変えるために QUALIDEA CODE-CHIBA
5/水着と果実のアルカディア QUALIDEA CODE-CHIBA
6/どうでもいい、世界なんて QUALIDEA CODE-CHIBA
あとがき
1/いつか自宅へ帰るために QUALIDEA CODE-CHIBA
朝の時報代わりに、砲弾が飛び交っていた。
グッドモーニング、チバ。
東京湾に架けられた巨大な橋へと至るレールの上を装甲列車が走っていく。鉄輪は悲鳴のように軋みを上げ、旋回する砲塔が武骨な音を立てていた。
きっと、海の向こうでは戦争が始まるのだ。
否。
始まるという表現は正しくない。
この戦争は終わったことがない。
戦禍は絶えず、軍靴の足音絶え間なく、眠る前に始まって、夢見る間も続いていて、起きた後も終わらずに。
故に、既に日常と化した我が闘争に、戦争と平和の区別はなく、武器にさらばと告げる暇もなく、誰がために鐘が鳴るかも知ることなく、眠らない山猫たちは戦場へ行った。
遠く響く銃声に鬨の声が重なる。
爆音の中でもその音声が良く通るのは、声の主らが未だ年若く、また、その一団には女子も多く含まれているからだろう。
えいえいおうおうやいのやいのと騒々しく、覇気に満ちた声には余裕の色が見受けられた。
さもありなん。この戦争に敗北はない。……さりとて、この戦争に勝利はない。
書き割りめいた海と箱庭めいた都市とで永々劫々繰り返されるカリカチュアの防衛戦争だ。
この戦争の相手、つまりは、かつて人類を滅亡の危機へと追い詰めた怨敵が〈アンノウン〉とそう呼ばれたのも今は昔。既に、未知との遭遇は既知との戦争になり果てた。
ルーティンワークのウォーゲームはバーチャルめいてリアリティがない。
ただ、音だけが真実リアルだった。
弾薬が爆ぜて、独特の風切り音が響き渡る。
奏でられるのは戦場の吹奏楽。
基準となる音