妹さえいればいい。5
小学館eBooks〈立ち読み版〉
妹さえいればいい。5
平坂 読
イラスト カントク
目次
小説家は妹キ●ガイⅣ
面接
羽島千尋の昼休み
編集部のバイトはじめました
水着回1
水着回2
水着回3
顔合わせ(アニメ編)
墓参り
実際にこういうミスが何度もあったので各編集部はもっと気をつけてくださいマジで
羽島千尋の趣味
新人賞選考会
凡人の星
白川京
あとがき
小説家は妹キ●ガイⅣ
人気のない静かな夜道を、女が一人歩いている。
二十代前半の美しい女だが、その顔には疲労の色が色濃く浮かび、せっかくの美貌を翳らせていた。
世間で一流企業と呼ばれている商社に入社して二年。朝早くから出社して、夜遅くに帰宅する毎日。ことあるごとに理不尽な叱責をする上司に加え同僚は皆競争意識が強く、職場の雰囲気は常に険悪である。
こんな毎日から抜け出したいと常々思っているものの、会社を辞める覚悟はない。
憂鬱なため息が女の口から漏れ、自分の耳へと届いた。
そこで女は違和感に気づく。
静かすぎる……。
深夜とはいえ、都心の駅へと向かう道のりである。それなのに周囲に自分以外の人の姿はなく、車も一台も通らない。
人気のない静かな夜道……?
会社から自宅までの道のりに、そんな道など存在しないはずなのに。
「ど、どこよ? ここは……?」
女が怯えた声を発した。すると、
「くふふ──」
いきなり真後ろから笑い声がして、女はびくんと身体を震わせ、慌てて振り返った。
そこに立っていたのは、美しい少女だった。
年の頃は十四か十三……あるいはもっと幼い。
精緻な人形のごとく整った顔立ちに、清流のように柔らかくなびく長い金髪、闇夜のなか真紅に輝く瞳。
一糸纏わぬほっそりした裸身が、月明かりを受け青白く輝いている。
幻想的なほどに美しい少女の裸身に、女は息をすることも忘れて見入ってしまった。
「くふふ──」
そんな女に、少女は再び妖しく嗤いかけた。
「ねぇ、アナタ。ワタシの〝いもうと〟になりなさい」
え? と女が聞き返すよりも早く。
野生の狼のような俊敏さで音もなく飛びかかってきた、少女の異様に鋭い牙が、女の首筋に突き立てられた。
「あ──」
女の首から熱い血が溢れ、代わりに、これまで味