ドラゴンクルス 全3巻
【合本版】
ドラゴンクルス
全3巻
あすか正太
角川スニーカー文庫
目次
ドラゴンクルス 1.神は死んだ!
ドラゴンクルス 2.俺に惚れろ!
ドラゴンクルス 3.二人の決断!
ドラゴンクルス
1.神は死んだ!
あすか正太
角川スニーカー文庫
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神は、実在した。
書に曰く、
その日、空を見上げることの出来た者のすべてが、神の姿を見たという。
それほどに、神は巨大であった。
立ち上がった姿は山を越え、雲を突き破り、天を覆った。
伸ばした手のひらは月に届くほどであったと語る者すらいる。
実際のところ、神の御姿がどれほどの高さであったかは不明だ。
分かることと言えば、神は人に似た姿をしていた、ということだった。
信仰に厚い者ならば『順序が逆だ』と声を荒くするだろう。
そんなことはどうでもよかった。どっちでもいいし、どちらでもかまわなかった。
その日、神は圧倒的にそこにいたのだ。
ある者は、霞がかった空の彼方に。
またある者は、太陽が激しく照りつける砂漠の中心で。
少年は綺麗に敷き詰められた石畳の上で、少女は氷雪の凍土を踏みしめながら、男たちは帆をはらませて進む船の甲板で、子を抱いた母は茅葺きの屋根の下から、この地上に現出した神の御姿を見上げていた。
塔の中で、神学論争を繰り広げていた者たちも三〇〇〇年の議論に決着をつけた。
神はいるのか、いないのか。
いたのだ。
これまで『神がいるのなら、なぜ人には見えないのか』という無神論者たちの問いに対して、敬虔な有神論者たちはこう答えてきた。
「物理的な存在しか知覚することの出来ない人の目や耳では〝いま、そこにいる〟神を認識することは出来ない」
無神論者たちは鼻で笑った。
「見えないものが見えないのは見えないからである、と言っているに等しい」
互いに歩み寄る意思のないところで始まる議論は、すべからく不毛だった。
神を信じる者は、神以外のものを信じられないというが、神を信じない者とて、無神という神を信じているに過ぎない。
両者は互いに自分に都合のよ