ウィッチ·アームス 魔法少女は素敵なお仕事
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もくじ!
序章 魔法少女は来てくれない
第一章 その名は魔法少女
第二章 魔法少女の学園
第三章 踊る魔法少女
第四章 魔法少女も通販する
第五章 魔法少女は疾走する
ダッシュエックス文庫DIGITAL
ウィッチ・アームス
魔法少女は素敵なお仕事
一郎
序章 魔法少女は来てくれない
僕達は、いつだって日曜の朝が待ち遠しかった。
幼稚園がお休みだから、ではなくて。
小学校がお休みだから、でもなくて。
むしろ土曜や日曜に幼稚園や小学校が無いのは、寂しいとさえ思っていたけれど。
それにもまして僕達は、日曜の朝を土曜の夜から……いや、毎日ずっと楽しみにしていた。
理由は簡単。大好きなテレビ番組が放送されるから。
勿論――親は僕達の見るテレビ番組をきちんと把握していて、それらをちゃんと、ビデオに予約録画してくれていたのだけれど。そういう事とは全く関係なく、僕達は朝の放送時刻になると、いそいそと寝床から起き出し、三人揃ってテレビの前に座り、今か今かと番組が始まるのを待っていた。
日曜の朝は、特別だった。
僕達みたいな子供の為の番組が、目白押しだ。
特撮も。アニメも。
格好良かったり、可愛かったり、時に怖かったり、様々な登場人物達が次々に画面の中に現れては、休む間も無く僕達を楽しませてくれた。僕は、姉と妹に左右を挟まれながら、テレビの前で歓声を上げ、時には泣き、時には怒り、夢中になって幾つもの物語に没頭した。
中でも特に、僕達がお気に入りだったのは――
『アラミタマが出たわ!』
『みんな、変身だ!』
『油断しないで……』
『ボク達の力を見せてあげる!』
『貫け、我が一撃!』
――格好良くて、とても強い、魔法少女達。
彼女達が、沢山出てきて、不思議な力でアラミタマと呼ばれる怪人や怪物と戦うアニメ『封神乙女メイデン・クラフト』だった。
「がんばれ、メイデンがんばれ!」
「アラミタマにまけるな!」
「あ、フタバがあぶない!」
「だいじょうぶだよ、リオリがたすけにくるよ!」
「あ、フィンだ! フィンがきたよぉ!」
僕も姉も妹も……もう、番組がやっている最中は大興奮。
そして終わった後は、やっぱり三人揃って『メイデン』ごっこをしたものだ