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作者:浅倉イネ,加藤いつわ
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-07-02(讲谈社)
价格:¥594 原版
文库:讲谈社轻小说文库

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アストレア戦記 ブリキカンドウォー ご利用になるブラウザまたはビューワにより、表示が異なることがあります。 イラスト/加藤いつわ デザイン/ムシカゴグラフィクス  凍りつくように、王国世界を侵食する闇がある。  人々が、恐れる闇。  その世界には、機械しか存在していなかった。人間が捨てた町。ひとが空っぽになった城下町や、荒れた民家、荒涼とした酒場。騎士が捨てた王城、誰も手入れをしなくなった庭園。砂漠化が進むように、その荒廃が世界の半分を覆い尽くそうとしていた。  ───その現象を、《樹デ氷スの・凍ピ結ア世ー界ド》と呼ぶ。 もう一つの《序寓話序章》 ***  人の波。  一日が終わる夕暮れ。  閑散とした市場や、明かりのついた街灯の下──。細い通りを、『少年』は息を切らせて走っていた。 (……はぁ、はぁ……っ)  小汚い帽子からして、みすぼらしい姿である。  少年は、ロウという。  歳は一五くらい。色あせ着古した服装に、安そうな革靴。短くて黒い髪をしている。『貧乏が服を着て歩いている』という言葉が彼の存在そのもので、盛りあがった懐には『何か』を隠しているようだった。  大通りに、出る。  貿易都市レアンの、表通り。  通称。『城壁を持つ港町』──と呼ばれる『貿易都市レアン』だけあって、人混みは王都に負けず劣らず、大規模であった。街の周囲には海水を利用した天険の水堀が流れており、ぐるりと防壁が囲んでいる。  夕暮れになっても荷下ろしが終わらなかった貿易船の水夫たちは、陸に上がって『今日の宿』を探す。自然、求められるところに宿屋も多くあり、そうした宿泊施設や、飲食店などの明かりが街の夜を賑わせていた。  少年は、その通りを走り抜けて、『城門』から外に出ようとした。 『──ビーッ。ビーッ。ドロボウ。発見』  が。小型の《青機甲戦機ブリキカンド》──。鋼鉄の装甲でできた翼と、歯車細工パーツによる機動性を持つ『監視鳥』に見つかり、少年ロウは足を止めた。 「……っ」 「──いたぞ、こっちだ」  警備隊の足音が、聞こえてくる。  ロウは、回れ右をした。  すでに息が切れている。心臓が押しつぶされるように、苦しかった。しかし、捕まったら最後だ。助けてくれるような保護者はいない。  ロウは渾身の力を込めて、脚を動かす。  酒場の外。樽を踏み越え。  通りを走る。