黒の召喚士 1 封印されし悪魔
目次
序章 召喚士
第一章 パーズの街
第二章 黒霊騎士
第三章 勇者
第四章 悪魔
特別編 魔王グスタフの娘
特別編 デラミスの勇者
特別編 コレットの苦悩
目を覚ますと辺り一面に緑が広がっていた。どうやら俺には見覚えのない、どこかの森の中のようだ。
木々が心地良いざわめきを奏でているが、内心俺は焦っていた。どうして自分がこんな所で寝転がっていたのか、全く記憶にないのだ。それどころか、自分の名前などの記憶も思い出せない。所謂、記憶喪失というやつだろうか。
幸いな事に、一般常識などの教養は忘れずに憶えているようだ。俺自身のことは全く思い出せないが、地球生まれの日本育ちだということは分かる。心に靄がかかったような、不思議な感覚だ。
途方にくれて暫く突っ立っていると、目の前に点滅しているものがあることに気がついた。先程までは何もなかった筈だが。
「何なんだ、これ……」
半透明の板にボタンのようなものが光っていた。よくよく見るとボタンに文字が書いてある。何だかゲームのメニュー画面みたいだな。
『異世界へようこそ!』
一瞬思考が止まってしまった。異世界? 俺が今居る場所が異世界だというのか。考える間も、ボタンの点滅は続いている。悪い冗談だと思いながらも、俺はそのボタンを押していた。
『おめでとうございます! あなた様は厳正なる抽選の結果、異世界への転生権を獲得しました。現在は転生前のあなた様自身に関する記憶は残っておりませんが、了解は転生前に頂きましたのでご安心ください。現代の知識については分かる状態ですので、その点は安心ですね!』
「何してるの転生前の俺!?」
『ここは剣が鍔迫り合いをし、魔法が飛び交うファンタジー世界です。今、あなた様は転生前に選択して頂いたスキルを会得されています。詳しくはこちらのステータス画面を御覧ください』
今度は板に定番のアレが表示される。あ、やっぱりゲームでよく見るあの画面だったのか。
* * *
■ケルヴィン 23歳 男 人間 召喚士
レベル:1 称号:なし
HP:10/10 MP:20/20 筋力:1 耐久:1 敏捷:3 魔力:5 幸運:4
スキル:召喚術(S級)空き:9 緑魔法(F級) 鑑定眼(S級) 成長