ヒマワリ unUtopial World 2
ヒマワリ:unUtopial World 2
林トモアキ
角川スニーカー文庫
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本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
目次
第一話 私立西東京東学園高等学校
第二話 んにゅっふ
第三話 ギャング観測衛星ヒマワリレーダー
第四話 風説に踊る
第五話 悪党競争曲
第六話 龍頭
あとがき
四年前の一月一日。
東京湾上の人工島、メガフロントが新ほたる市として出発したその日。桐原士郎が第二レインボーブリッジの上から眺めたメガフロントは、通い慣れたその場所とは様子が違っていた。停電でもしているのか、電灯の照明というものが一つも見えない。旧年から新年に切り替わった、あるいは市政開始を祝うための催しかと思ったが、そうではなかった。
一向に進まない渋滞の向こうで、橋が落ちた。
浦安連絡橋、姉ヶ崎湾岸線、アクアライン、その他メガフロントへ続く全ての橋が一瞬の爆音と閃光と共に崩落した。橋の上には大量のクルマがいて、それぞれのクルマの中には家族連れや恋人連れや大勢が乗っていて、それが五十メートルの高さから海面目掛けて落ちていく。
式典が行われるテーマパークの辺りから、何度も何度も散発的なフラッシュが見えた。見えるような距離だった。橋が落ちたときのような破裂音も、小さくだが爆竹のように数え切れないほど聞こえてきた。
渋滞の車から降りた人々もいたが、目の前の出来事を把握しようと目を見開き耳を澄ますのが精一杯で、パニックにすらならなかった。
東京湾が真っ赤に燃えている。
呆然と単車に跨がったままの士郎が我に返ったとき、一番最初に思ったことだった。
意味がわからない。わけがわからない。何かが起きてる。何かはわからない。携帯の回線は完全にパンクしていた。仲間たちは先に行っているはずだが、連絡の取りようがない。
橋が落ちている以上、前には進めない。
橋が落ちている。
橋が、崩れてくる。
クルマが、人が落ちていく。
そして自分も──。
「ッ……!!」
そこで目が覚める。そういう悪夢。そういう、何十回目かの朝。
士郎は呼吸することを思い出したように喘ぎながらベッドから降り、汗を拭う。