ばいおれんす☆まじかる! 全3巻
【合本版】
ばいおれんす☆まじかる!
全3巻
林 トモアキ
角川スニーカー文庫
目次
ばいおれんす☆まじかる! ~九重第二の魔法少女
ばいおれんす☆まじかる! ~恋の呪文は修羅の道
ばいおれんす☆まじかる! ~核の花咲く日曜日
ばいおれんす☆まじかる!
~九重第二の魔法少女
林 トモアキ
角川スニーカー文庫
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目次
第1話 落第天使と暴力少女
第2話 トレジャーハンター・緋奈
第3話 VS上位魔族!
第4話 光を放つもの
序章
男は薄暗い研究室で、ペンを走らせていた。気が遠くなるほど繰り返した計算を、それでもなお続ける。
野望のため。
復讐のため。
それだけが今の彼を駆り立てた。
「なぜだ……なぜ……!」
白紙だったものは数字と記号に埋め尽くされている。それを無造作に、握り潰すように丸め、投げ捨てた。
男の名は無い。それは忌まわしい過去とともに置いてきた。学界から追放されたあの日。復讐を誓ったあの日。
天才の栄誉は異端者の烙印に変わった。
「まだじゃ……まだ諦めぬ……世界をこの手にする、その日まで……!」
その時、稲妻が研究室を駆け抜けた。光は一瞬のフラッシュにしか見えなかったが、赤く、はっきりと部屋の全貌を浮かび上がらせた。散乱した紙屑の山、埃まみれの大型コンピューター、何年も映すことのなかったスクリーン……そして男の小さな背中。
男は振り向く。無骨な義足がコツと鳴った。
「誰じゃ!」
何十年も齢を重ねたその男にさえ初めての、ぞっとするような不快感だった。手の平に、じわっと汗が浮かんだ。鼓動が早まった。そして目に焼き付いた光の残像が、ゆっくりと溶けていく。
そこに立っていたのは女だ。陶器のような美しい肌に、人間離れした青い髪が良く似合う女だった。
「……我が名はエンベローペ。魔界の住人。魔王の使い。そしてお前に力を与える者」
女は血塗れたような