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作者:萩原麻里,水月悠
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2016-06-18(一迅社)
价格:¥594 原版
文库:一迅社文库

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小和田くんに隙はない? 飯田さんの学園事件簿 挿画:水月悠 デザイン:島田碧(KOMEWORKS) 第一話 消えた猫 【1】 「彼女」はその日、もの凄くツイていなかった。  まずはしょっぱなから、いつもなら余裕で起きられる時間に二度寝して遅刻しそうになった。そのうえ急いで家を飛び出したのに途中の信号は赤ばかりで、お陰で普段の倍近く時間がかかり、間に合う筈の電車も目の前でドアが閉まって乗車できなかった。それでも何とか始業三十秒前に教室に駆け込んだら、前日に鞄を変えたせいで肝心の教科書を持ってきていなかったのだ。  ひとつひとつは些細なものでも、積もり積もれば精神的にずしりとくる。その後も、急にペンのインクが切れたり、シャープペンシルの芯を忘れたり、腕時計の調子が悪かったり、珍しくお弁当を忘れたから学食に行くつもりが、先生にプリントを回収して職員室に運ぶように言われたせいで、結局、売れ残りのおにぎりしか食べられなかった。  そうしてトドメが、明日絶対に必要な資料を学校に忘れて帰宅してしまったこと。こうして一日を振り返っても、普段からノーミス、感情をほとんど顕にしたことがないと言われるタイプの自分が、ありえない失敗ばかり重ねてしまった。  ……それもこれも、数日前、あんなことがあったからだ。  薄暗い校舎の廊下を歩きながら、彼女はぐっと奥歯を噛み締める。思い出したら涙が出そうだ。泣いたって、何も解決しないのに。  ポケットに入れていたスマホで確認すると、すでに時刻は午後九時。守衛に声をかけ、校舎の中に入れてもらってから一〇分ほど経過していた。目当ての場所はもうすぐそこだが、資料を見つけて帰宅したってどのみち明日の準備なんてできやしない、と思うと憂鬱になる。あの問題が解決するまでは、結局眠れないまま遅くまで無駄な時間を過ごして朝寝坊するだけ……その、繰り返しだ。  また涙がこみ上げそうになって、彼女はぎゅっと唇を引き結ぶ。それから気をそらすように顔を上げた時、ふと、静寂に満ちた廊下に響く奇妙な物音に気づいた。  それは、かぼそい、まるでガラスを引っ掻くような音。  もしかして、窓ガラスに何かが当たっているのだろうか、と思いかけて、彼女はすぐに首を振る。違う。これはただの物音じゃない。学校で聞くには不釣り合いでぞっとするけれど、決して珍しいものではない、あの……。