俺と魔王令嬢の異世界婚活奮闘記
挿画:白谷こなか
デザイン:高橋忠彦(KOMEWORKS)
序章 魔王の婚活命令
「おまえ達、婿を見つけて参れ!」
いきなり魔王から大喝された少女四人は、思わず顔をしかめた。
理由の一つは、父である魔王の地声がやたらと大きいからだ。広々とした謁見の間の空気が、ビリビリと震える気がしたほどだ。
もう一つの理由はもちろん、父王の言い草が完全に娘達の意表を衝いていたせいである。
珍しく魔王城最上階の謁見の間などに呼ばれたと思ったら、これである。
「……ええと、父上」
長女であるミキは、呼ばれた他の三人の娘がまだポカンと口を開けたままなので、やむなく自分が口を開いた。脱力して椅子にでも座り込みたいところだが、あいにくこの最上階は天井を支える十六本の石柱と純金製の玉座以外には、ほぼ何もない。
「なにか? 言いたいことがあるなら、申してみよ!」
ミキと同じく長い銀髪をした父王は、玉座にふんぞりかえったままで顎を上げた。
アイスブルーの瞳はひどく真剣であり、今のを冗談だと認める気は微塵もないらしい。
「では言いますけど」
やむなくミキは、眉根を寄せて言った。
「それぞれ母上が違うとはいえ、長女のあたしはまだ十四歳だし、末っ子のルナに至っては十歳ですよ? 結婚なんかまだ全然早いし、みんな遊び足りないお年頃――」
「たわけえっ!!」
『きゃあっ』
またしてもいきなりだったので、ミキを始めとする四人の娘の悲鳴が、同時に上がった。
それと、人がまだ話している途中なのに思いっきり怒鳴られ、ミキは大いにむくれた。
周囲全部が窓なので、陽光が嫌というほど降り注ぐ。父が盛大に飛ばした唾が、キラキラと光りつつ四散するのがよく見えたほどだ……全然嬉しくないが。
「よいか、余が魔界の玉座に着いて、はや五百年――その間、おまえ達の亡き母達を始めとして、正室や側室を多く持ったが、ついに男子が生まれなかった。せっかく生まれた女子も、数多の戦で次々に戦死を遂げ、とうとう最後に残った子供はおまえ達四人だけ……これでどうして、余の後を継がせられよう」
「父上、言いたくありませんけど、それって女性差別じゃありませんか」
ミキは膨れっ面のままで問う。
「最近見つけた異世界には、どうも問題視されて