英雄教室 5
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CONTENTS
第一章
「ローズウッド学園の驚愕」
第一話 「キス魔ブレイド」
第二話 「アダルト・クー」
第三話 「ハイウィザード・ブレイド」
第二章
「ガールズミッション①丸刈りジェームズ」
第三章
「ローズウッド学園の対抗戦」
ダッシュエックス文庫DIGITAL
英雄教室5
新木 伸
第一章「ローズウッド学園の驚愕」
第一話「キス魔ブレイド」
○SCENE・Ⅰ「国王とお姉様」
いつもの朝。いつもの校舎の中。
行き交う生徒たちが、国王に気がつくと、挨拶をしてゆく。
「おはようございます。陛下」
「ああおはよう」
「学長陛下。おはようございます」
「うんおはよう」
ブレイドはそんな様子を、ぼんやりと眺めていた。
こいつ。人望があるのは確かなんだよなー。国王のくせに。
生徒たちは親しみをこめて、挨拶をしてゆく。これが「普通」ではないことを、ブレイドは知っている。他国の王もたくさん知っているが、他国では、どこも、ガチガチに凝り固まって、格式張った挨拶をするのが常だった。
「よいお天気ですね。陛下ー」
「ああそうだね。マリア。今朝の起こしかたは最高だったので、また明日もあのプレイで頼むよ」
「そういうことを言うと、もっと〝きつく〟しちゃいますからね?」
「はっはっは……、よろしく頼むよ」
なにを話しているのだろう。マリアと国王、二人の会話は、難しすぎてわからない。ローズウッド学園初代生徒会長に就任したマリアは、お寝坊さんの国王を叩き起こす係であることは、まあ、わかるのだが……。
たまに思う。
ごく、たまに……。ほんとうに、ごくたまに思ったりするのだが――この男、ギルガメシュ・ソウルメーカーが、痴れ者でうつけ者を〝演じて〟いるのではないかと……。そう思わないこともない。周囲の者にフランクに振る舞ってもらうために、わざと〝だめな大人〟を演じているのだと――。
いや。まさかな。
ブレイドは馬鹿な考えを、頭を振って打ち消した。
「どうしたのかね? ブレイド? ……君は挨拶をしてはくれないのかね?」