フェアトラークの七剣人
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口絵・本文イラスト/hanamuke
デザイン/ムシカゴグラフィクス
序章
「ハア、ハア……」
街道からわずかに外れた森の中。
木々の合間を縫って駆けるイリアの息は上がっていた。外出する機会があまりない彼女にとって、平らでない道を走るというのは、想像以上に難しいものだった。
逃げるその足は本人の意思とは関係なく重さを増していき、すぐに追いつかれてしまう。
追いかけてきた男二人は挟み込むようにして逃げ道を塞いだ。
「いやっ……来ないで!」
男の一人がイリアに向かって手を伸ばす。
「そんなこと言わずに、おとなしく俺たちと……っ!?」
だが、その手は彼女に届くことはなかった。
突如イリアの脇から出てきた細長い棒のようなものに、男の身体が吹っ飛ばされたのだ。
「やれやれ……大の男が二人掛かりで女を追い掛け回して、なにをやっている?」
呆れた口調でイリアの背後から姿を現したのは、長身の男だった。
赤みがかった茶髪はぼさぼさで薄く開いた瞳は眠たげ、おまけにやる気の感じられない無表情。着ている衣服もほつれや汚れが目立つ。それに彼が手に持つ先ほど突き出した細長い棒──鞘に納めた状態の剣は、異様に細く奇妙な形をしていた。