ボンクラーズ、ドントクライ1
小学館eBooks〈立ち読み版〉
ボンクラーズ、ドントクライ
大樹連司
イラスト 白味
目次
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
第七章
第八章
終章
これは、一九九九年に起こったお話である。
しかも、片田舎の県立高校が舞台だ。
インターネットはまだまだ黎明期で、光回線や常時接続なんて夢のまた夢、テレホタイムなんて言葉のあった時代。
東京はどうだったか知らないが、こっちじゃ高校生でPHSや携帯電話を持っているヤツなんて珍しく、そもそも僕の高校の周りには全然アンテナが立ってなかった時代。
──そういう時代の、お話だ。
第一章
「さて、すでに担任の先生方よりHRホームルームなどでお話があったと思うが、先日、近隣の高校生たちが飲酒騒ぎを起こし、救急車が出動する騒ぎがあった──」
二学期が始まってすぐ。第二土曜日三限目の体育館。
生徒自治に重きを置く県立範堂高校では、月に一度、生徒集会が開かれる。
「歴史と伝統ある我が校の生徒諸君らに限って、そんなことはしないと生徒会長たる私は確信しているが、くれぐれも愚かな真似などは謹んで──」
この日も、いくつかの議題が生徒投票にかけられた後、壇上に立った長身の橘生徒会長が、締めの言葉を述べている。
とても平和な学園の光景である。
だが!
「うるっせぇぞぉ、ヒック」
そこに一升瓶を持った悪漢が登場。
「うわっ、貴様、酒に酔っているな! 生徒諸君! お酒を飲むとこのように理性をなくしてしまい、大変危険だ! 絶対に未成年飲酒は禁止だぞッ!!」
「うるせー!」
生徒会長の呼びかけを遮るように襲いかかる悪漢!
危うし生徒会長!
しかし──!
「「まてぃ!」」
轟く声とともに、上手側から登場するふたつの影。
「な、何もんだ、てめーら!」
「仮面ハンドー一号!!」
「同じく二号!!」
青のマスクに赤い瞳。額には校章を模したマーク。黒光りするレザー製のスーツ。
赤のマフラーに銀のグローブ、ブーツが一号。
赤のマフラーに赤のグローブ、ブーツが二号。
「「範堂高校の平和を乱すやつは、俺たちが許さん!!」」