ブック×マーク!2
小学館eBooks〈立ち読み版〉
ブック×マーク!2
桧山直樹
さくや朔日
目次
序章
第一章 初めての出動
第二章 怪盗登場
第三章 白雪のライバル
第四章 再び病院へ
第五章 ロビンソンの島
第六章 大事な一冊
終章
あとがき
序章
二人の女性が通りを駆け抜けていく。
「お待ちなさいっ!」
「待てと言われて待つバカはいないわよ」
たまたまその道に居合わせた通行人は、その二人の姿に目を丸くし、何かのイベントか、それともドラマや映画の撮影かといぶかしんだ。コスプレイベントの会場ならいざしらず、日本の普通の都市の住宅街を走り抜けるには、二人とも少々目立つ格好だったから。
逃げている方の女性は、二十代後半ぐらいだろうか。
その服は袖や裾は長いものの、肩が露出していたり、スリットが入っていたりの変則的なデザインで、見事なボディラインが強調されている。そして、顔の下半分を長いマフラーで隠しているために、まるでアニメやマンガに登場する女性の怪盗といった格好だ。ハイヒールを履いているくせに、逃げ足の速さも怪盗並みだった。
一方、その女怪盗を追う方も負けず劣らず異様な風体だ。
こちらは高校生ぐらいのティーンエイジャーだが、そのコスチュームはまるで占い師。
ただでさえ活動的とは言い難いロングスカートの上に、フードつきのマントまで羽織っている。見るからに走りにくそうな格好なのだが、にもかかわらず、意外に足は速く、マントをひるがえし、フードと共に長い髪をなびかせて怪盗を追いかける。
とはいえ、怪盗の方が彼女に比べればまだ活動的な服装であるためか、余裕があるようだった。
「そんな格好で、よく私の足について来られるわね、司書さん」
怪盗は逃げながら振り返り、小馬鹿にした声をかける。マフラーで口元を覆っているせいで声はくぐもっていた。
「今は魔法で身体機能を高めてますからね。とにかく、異界本を返しなさい!」
司書と呼ばれた少女は怒鳴る。
「日本語は正確に使いなさい。〝返す〟というのは持ち主に戻すことよ。司書さん、あなたに渡したらこの本は異界図書館に収蔵されちゃう。元の持ち主のところには戻らない。だからこの本をあなたに渡すのを〝返す