音使いは死と踊る 1
目次
第一章 不協和音
第二章 回転決意
第三章 重圧乱心
第四章 余韻残響
終章
イラスト/巖本英利
朝のホームルームが始まる前の、まだ人の少ない教室。その教室の真ん中から少し外れた半端な席に座る俺は、遠い窓から景色を眺めていた。
そこからは空を飛んで楽しそうに登校する学生達が見えた。
あーあ、浮遊能力者はいいなぁ。ギリギリに家を出ても学校に間に合うんだろうなぁ。なんてことを考えながら俺は肘をついて顔を支える。
窓の景色には、空を飛んでパトロールする自衛軍の人達の姿も見えた。
自衛軍というのは、いわゆる正義の味方だ。主に能力者だけが集まった組織。俺のような能力を持たない無能力者からすると、彼らの存在はありがたい。街で偶に発生する魔獣を駆除してくれるのは彼らだ。
そして、自衛軍の反対勢力である悪の組織「Anonymousアノニマス」から俺達を守ってくれるのも彼らなのだ。悪の組織とは言うが、奴らの目的は分からない。噂によると世界征服だのなんだの。くだらないことを考える集団もあったもんだが、自衛軍がいれば安心である。ちなみに、俺の兄貴も自衛軍に所属している。
しばらくぼーっとしていると後ろから俺に声をかけてきた男がいた。
「よっ、風人。おはよう」
神谷風人。俺の名前だ。
そして、俺の名前を呼んだのが御堂弦気。
「……弦気か。おはよう」
「なんか元気ないな」
「月曜日の憂鬱だよ」
御堂弦気。彼は俺の親友であり、十数年来の幼馴染である。
弦気は俳優になれるんじゃないかと思わせる整った顔と、爽やかな笑顔が特徴的だ。ようするにイケメンだ。
「おはーよっ! 弦気!」
ガラッと教室の扉が開き、一人の女子生徒がそんな声を上げてこちらまで駆けてきた。
彼女の名前は古谷凛。こいつとも幼馴染で、付き合いで言えば弦気よりも長いのだが、凛は弦気に惚れている。
「おはよう、凛」
「あ、風人もおはよう」
凛に、ついでのように挨拶される。
俺が一応それに返そうとしたところ、もう一人、俺の机の元に現れた女の子がいた。
「おはよう、弦気!」
前方から弦気に勢い良く抱きついた彼女の名前は、大橋瞳。
大橋は学校でも屈指の美貌の持ち