サイハテの救世主 全3巻
【合本版】
サイハテの救世主
全3巻
岩井恭平
角川スニーカー文庫
目 次
サイハテの救世主 PAPER I:破壊者
サイハテの救世主 PAPER II:黄金火山と幸福の少女
サイハテの救世主 PAPER III:文明喰らい
サイハテの救世主
PAPERⅠ:破壊者デモリツシヤー
岩井恭平
角川スニーカー文庫
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本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。
目次!
序章
1*1
2*1
3*1
4*1
5*1
終章
あとがき
序章
太陽が溶けて、空から降っているかのような暑さだった。
「ヒマやさー」
赤いペンキで『みそら商店』と壁に書かれた建物の横で、濱門陸は嘆息した。
商店の店先には、五台の自動販売機。店に面した細い車道は、平日の昼間とあって人通りも少なく、海から飛んできた砂がうっすらと降り積もっている。
沖縄県、嘉手納町。
海に近い住宅街にある雑貨屋兼飲食店パーラー、みそら商店。
そこが濱門陸の拠点だった。
去年までと同様、高校に入学してはじめての夏休みも、それは変わらない。
「今日はまた、あっついなぁ……」
商店の横には簡易式の屋根があり、ベンチと丸いテーブルが置かれていた。陸は右手にアイスキャンディを持ち、左手をうちわにして自分の顔をあおぐ。
真夏の沖縄は騒がしい。住宅街の向こうにある国道は、地元住民と観光客の車で渋滞していることだろう。だがバカンスやレジャー目的の観光客とは無縁の住宅街内部は、そんな喧噪とは無縁である。季節ごとの風景は変わらず、平穏そのものだ。
「うおっ。っととぅ」
ぼうっとしているうちに、アイスが崩壊しかけていた。日に焼けた顔とショートカットの髪を寄せ、ソーダ味のそれを一気に攻略する。タンクトップの下に着たキャミソールの肩紐が、ずり落ちそうになった。
「店番か?」
一人の少年が現れた。通っている高校の体操服であるハーフパンツとサンダル、という組み合わせも見慣れたものだ。
陸はアイスをくわえたまま、首を左右に振った。
「んーん」
「ふうん」
おざなりな相づちを残し、少年が店内に姿を消した。
彼は陸