七星のスバル3
小学館eBooks〈立ち読み版〉
七星のスバル3
田尾典丈
イラスト ぶーた
目次
[序章]
[第一章 剣を求めて]
[間 章 追憶 ~the side of 〝Pleiad Crisis〟 act.1~]
[第二章 大海の洗礼]
[間 章 追憶 ~the side of 〝Pleiad Crisis〟 act.2~]
[第三章 真ナル現実]
[間 章 追憶 ~the side of 〝Pleiad Crisis〟 act.3~]
[第四章 未来の選択]
[終章]
あとがき
[序章]
「──つまんないな」
少年は、この世界に飽きていた。
特殊な家庭環境で育った少年は、幼い頃から何でもひとりでこなす必要があった。
聡明で要領もよかった少年にとって、それはさほど問題ではなかった。問題だったのは、目端がきくが故に、自分のこの先の人生が見え透いてしまっていたことだ。
繰り返される予定調和と、無味乾燥な日々。それは少年の心を昏く澱ませていった。
──ここじゃない、どこかに行きたい。
そんなことを思うようになった少年に、転機が訪れる。
『ようこそ、幻想に彩られた《ユニオン》の世界へ──』
デジタルで構築された、もうひとつの現実アナザーワールド。限られた者しかログインすることのできない電子の異世界から選ばれたのだ。世界中で騒がれている話題のゲームをプレイできることに、同郷の者は誰もが少年を羨ましがった。
倦怠感がすぐに薄れることはなかったが、現実よりやりがいのようなものはあった。
何よりもセンスを使う感覚は悪くない。
《ユニオン》で毎日のように、ひとりでモンスターを狩る中、彼は少しずつ頭角を現し、周囲から一目置かれるようになっていく。
そしてもうひとつ──出会いがあった。
「お前が、最近すげーって言われてる変幻使いか?」
「言われてるかどうかは知らないけど……自信はある方だね」
天雷の鉄塔と呼ばれるダンジョン。
話しかけてきたのは五人のパーティだった。
闘気使い、心奏使い、魔導使い、天理使い、夢境使いとそれぞれセンスの違ったアンバランスなパーティ。全員が日本人で年格好もほぼ同じのようだった。