ぜんぶ死神が無能なせい
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口絵・本文イラスト/藤真拓哉
デザイン/團夢見(イメージジャック)
1 ノックするのは……
AM0時3分
0時を回ったときだ。
おれは一人、自室で懊悩していた。
明日の試験のため、一夜漬けするべきではないのか? いやしかし、いまさら足搔いたところで、戦況は変わらないのではないか? そう、もう焼け石に水なんじゃないか? 焼け石にコカ・コーラなんじゃないか? ああ、悩ましい。
そんなこんなで、おれがスマホのゲームをしていると、ドアがノックされた。
さて、誰だろう? 両親はいま外国だ。息子のおれもよくわからない理由で外国だ。いいのだろうか、そんな両親で。
大学生の姉さんは、今夜は帰らないという連絡があった。正義を果たすため、暗黒の都に攻め入ってくるらしい。まったく意味がわからないけど、あまり意味をわかりたくない。
というわけで、今夜、この挟間家にはおれと妹しかいない。だが妹がおれの部屋のドアをノックすることはない。
したくてもできないだろう。廊下にブービートラップを仕掛けてあるので。奴が、五体満足でここまで到達することは不可能だ。
ノックが繰り返される。
ハッとした。そういえば前に深夜の映画で見たぞ。Jホラーだ。日本らしく陰気な悪霊が出てくる映画だった。あれも深夜のノックからはじまったような。すると、あれか、現在進行形のあのノックは、Jホラー的なあれなのか。
おれは恐る恐るドアまで歩いていった。居留守とか使えるのか。Jホラーに居留守は通用するのか。そんなことを考えているあいだも、ノックは続く。
コン、コン、コンコンコン、コ、ン♪ コン♪ コン♪ ココココココンコンコン♪
気のせいか、途中からリズミカルになっているけど。なんか小粋なメロディ奏でているけど。
「どちらさん?」
問いかけるとノックが止んだ。
すると、舌足らずな声が答えるのだ。
「三河屋のサブちゃん」
「いやいや、三河屋のサブちゃんなわけないよね。そちらが誰か知らないけど、三河屋のサブちゃんでないことだけは言いきれるからね」
沈黙が返ってきた。なんだか得体の知れない悪霊は、おれのツッコミに恐れをなし、退散したのだろうか。
ホッと胸を撫で下ろそうとしたとき──コン