アヴァロン·フェイズ2
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口絵・本文イラスト／とれりす
デザイン／高橋忠彦（ＫＯＭＥＷＯＲＫＳ）
第一章 妹襲来
背中まで伸ばした鴉色のストレート。
真っ直ぐに切り揃えたその前髪が、猫の様なパッチリとした吊り目によく似合う。
小柄な体付きと精緻な美貌は、まるで名工によって命を吹き込まれた日本人形が生き生きと動き出したかのようだ。
ただ道を歩いているだけだというのに、すれ違う人々がみな目を奪われて振り返る。
その視線をまったく意に介さず、少女は大仰な造りをした校門の前で足を止めた。
ペンデュラム・アカデミー。
異世界からの侵略者ティルナノーグに対抗するため、超常武装アヴァロン・フェイズに関わる人材の育成を目的として設立された国営特務教育機関。
「帰って来たわよ、お兄ちゃん」
両手を腰に当てて華奢な割りにはよく育った胸を突き出すように背筋を伸ばすと、美貌の少女は不敵な笑みを浮かべた。
※※※ ※※※ ※※※
「勝負あり。勝者、傀鳳リン」
アヴァロン・フェイズ《シルフェリア》の銃剣が対戦相手の喉元に突き立てられ、機能停止の判定が下された。
勝ち名乗りを受け、特戦科最強と噂される少女が頭部の武装を解除し、無表情な美貌を露わにする。
途端にアリーナのスタンド席から割れんばかりの歓声が上がった。
「やっぱりすごいな傀鳳さんは。他の人たちと動きが全然違う」
「機動力は群を抜いていますね。早く戦ってみたいです」
相手にほとんど何もさせず圧倒的な戦いぶりを見せた彼女に、森賀瞬が感嘆の声を漏らす。
隣で熱心に観戦していた黄金の髪の美少女も、興奮に緑の瞳を輝かせた。
アリアンロッド。敵国ティルナノーグの皇女でありながら、こちらの世界に興味を抱き、祖国を出奔した少女。
「その前に姫様は私が倒しますから。私が勝ったら今度は姫様が私の言うことを聞いて、一緒にティルナノーグに戻って下さい」
強敵との対戦に心躍らせる戦闘種族の姫に、キュコルが小柄な身体に闘気を漲らせた。
皇女を連れ戻しに来た戦士なのだが、戦いに敗れたため、絶対服従の掟により従卒として彼女もこちらの世界に残ることになってしまったのだ。
