デッドマンズTV
この本は縦書きでレイアウトされています。
Contents
PROLOGUE 序章
SCENE 01 再会
SCENE 02 湧き出るものたち
SCENE 03 はじめての脱出
SCENE 04 ネタこそ芸人の武器
SCENE 05 コンビ
SCENE 06 笑いの拡散
EPILOGUE 終章
ダッシュエックス文庫DIGITAL
デッドマンズTテイーVビー
リタ・ジェイ
人が笑うということ。ユーモア。
そのユーモア、という単語は、ヒューモア――つまりは人間ヒユーマンだとか、人間らしさという意味にも取れると、誰かが書いていた。
例えば、バナナの皮を踏んだ男が転ぶ。
あわててその場から立ち上がり、平静を装いながらもあたりを気にしている様子。
人間味あふれる、ユーモアを感じる光景だ。
ただ、人は転べば痛いし、周りの人に醜態を見られるのは恥ずかしい。
そんな姿を見て笑うなんて、よく考えてみれば残酷だ。
残酷な状況を面白いと感じる。それが人間の罪深さかもしれない。
でも、もし転んだ男性が今まさに病気の母のお見舞いに行く途中で、手に持った花束がばらまかれてしまったら?
財布には、花束を買うだけで精一杯で、代わりの花束を買うお金は残っていない。
せめて道路に散らばった花を集めようとしても、体が思うように動かない。
転んだ時に頭をしたたかにぶつけていたのだ。
後頭部にぬくもりを感じ、髪の毛が血で濡れてきているのがわかる。
腕を動かそうとしても、ぴくりと震えるのみ。
代わりに足はせわしなく痙攣し、殺虫剤をかけられた虫のようになる。
それでも、彼を面白いと感じる人はいるのだろうか。
もしいたとしたら、それは「ひとでなし」と呼ばれるだろう。
――だったら、ひとでなしは、残酷であればあるほど笑うのだろうか。
とても気分がよかった。
新橋と台場をつなぐモノレール「うみにゃんこ」の車内。
普段はえらく混んでいるボックス席に運良く座れたというのもあったが、それだけじゃない。
俺は窓に広がる東京湾を見ながら、手元のスマホのメールアプリを立ち上げる。