どろぼうの名人
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どろぼうの名人
中里十
イラスト しめ子
目次
一日目
二日目
三日目
四日目
五日目
六日目
七日目
八日目
九日目
十日目
十一日目
十二日目
十三日目
十四日目
十五日目
十六日目
十七日目
十八日目
十九日目
二十日目
二十一日目
二十二日目
二十三日目
二十四日目
二十九日目
三十四日目
二百四十一日目
二百六十二日目
あとがき
姉へ
登場人物
佐藤初雪……主人公。中学三年生。愛の「偽妹」。
川井愛………古本屋の店主。裏社会の有力者。
佐藤葉桜……初雪の姉。裏社会で活躍中。愛とは腐れ縁。
川井文………愛の娘。小学五年生。初雪を慕う。
私の姉は、魔女だ。冬には夜を纏う。
それは吸いこまれそうに黒いマント。
姉がそれをまとうようになると、雪が待ち遠しくなる。吸いこまれそうな黒につかまってしまった雪の結晶が、その小さなとげとげで私の目につきささって、血管に入りこんで、身体じゅうに回る。そうすると私は、自分の名前のとおりの存在になった気がして、姉の肩に降り積もって、どこまでも一緒にゆけるような気がする。
私の名前は、初雪。
佐藤初雪。
生まれてから今までに、もう十五回も冬を越したのに、私の名前はずっと初雪のまま。きっと姉のせいだ。『だって初雪は毎年降るでしょう?』。そうやって姉は魔法をかける。
私は覚えていないけれど、きっと姉は同じようにして、私を土くれから人にした。土くれを人の形に固めて、『あなたは初雪。私の妹』と魔法をかけて、私をつくった。
そのとき姉は、きっと寂しくて、私をつくった。
姉は寂しがり屋だ。あんなに強くて美しくて輝いていて、姉のそばにいる人は誰でも寂しさなんか忘れてしまうのに、自分のことだけは温められない。だから私をつくった。
私が姉のことを気にかけて、からかって、頼りにして、馬鹿にして、待って、待たせて、傷つけて、抱きしめて、愛するように。
私はそうしている。まるで、姉の言いつけに従う妹のように忠実に。
きのう、冬がきた。姉があのマントをま