さちの世界は死んでも廻る2
小学館eBooks〈立ち読み版〉
さちの世界は死んでも廻る 2
三日月
イラスト maruku
目次
第零章 夜の決意
第一章 あなただけ見つめてる
第二章 ありがとう
第三章 作戦はばっちり?
第四章 大好きだから踏み出せない
第五章 友達はいますか?
第六章 BOYS BE BRAVE
あとがき
第零章 夜の決意
新月の夜、森の中で男と少女が対峙していた。
少女はその背を見据えゆっくりと歩きながら、逃げる男を追っていた。その足元には四つの青白く丸い光がある。
男は足をもつれさせながら必死に走るのだが、逃げおおせたと安心した瞬間に、落ち葉を踏み締める少女の足音が聞こえてくる。そして気づいたときには、少女の姿を目の当たりにしなければならなかった。
「さて、聞いても無駄でしょうが、なぜヒトを殺めたのですか?」
男はとても苛立っていた。己の種としての本能が満足できないからと、自らヒトを殺め、そして貪ったのだ。そのときの衝撃はすさまじかった。やはり生きているヒトの肉は違う。男はそのとき、魂の揺さぶりを感じた。
「俺はただ本能に従っただけだ!!」
男がそう叫ぶと、少女は虚しそうにため息をついた。
「そのとおりです。似たような主張をわたくしは何度も聞きました。しかし、それを許せる立場にないのです」
そう言って、少女は男に突進した。男はそれに反応さえできない。わき腹を蹴られて吹き飛ぶ。柔らかい腐葉土に頭から突っ込み、まるでボールのように転がっていった。
「時間がないので一気に決めさせていただきます」
そのとき、青白い光が弾丸のごとく宙を舞った。
男はそれが生き物の眼球であることに気づくことはなかった。牙が男の体を切り裂き、爪が孔を穿ける。
「それでは昇天──いたします」
すでに動かなくなっていた男を、見下ろす姿勢で少女は言う。
闇夜を引き裂く巨大な音とともに、木の葉が盛大に舞った。
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「素晴らしい! 演舞のような華麗さでした。見事な仕事ぶりに私は見ていることしかできませんでしたよ」
賞賛の拍手を贈る男に、少女はうんざりして言った。
「いえ、手伝っていただく必要はありません。そもそも、貴方も不死者アンデ