にこは神様に○○(ナニ)される?2
小学館eBooks〈立ち読み版〉
にこは神さまに○ナ○ニされる? 2
荒川 工
イラスト ことみようじ
目次
神さま、お赤飯に仰天す。
神さま、家族に憧れる。
神さま、奇しくも彼を思い出せず。
永遠に救われない少女の行方。
さようなら、にこ。
*
あとがき
ⅰ.
秋が、そろそろ帰り支度を始めていた。
足を踏みしめればカサカサと地面の枯れ葉が音を立てた。
そんな侘びしさに満ちた林の中で、栗下にこは立ち止まった。
「おーい、聞こえるー? ごはんだよー」
声が、風に応えた木々のざわめきに混ざって消える。
時刻は午後五時を回ったばかり。夕陽は遠くの空とビルの間に沈みかけていた。
一週間ほど前はTシャツ一枚でも過ごせたのが噓みたいに涼しい。
「あの子ってばもう、どこ行ったんだろ……」
ともすれば季節の感傷に浸りそうな自分を奮い立たせて、にこは歩を進めた。
ここはさして広くもない、自分が生まれ育った安国神社敷地内の林だ。ホームグラウンドといっていいだろう。
──だけどそれでも、見つかんないだなんて。相手が神さまじゃ神社って場所は分が悪いとでもいうのだろうか。
「……くっそう、あのいたずらっ神め!」
腹立ち紛れにそう言い捨ててから、
「あいん、あい───ん!!」
ぐるりに向けて彼女神さまの名を呼ばわった。
がさり。そう草が鳴ったのは、にこのほんとにすぐ後ろ。
さらに間髪容れず、ふううぅぅっっっと背後から優しい吐息で、首筋に愛撫を受けた。
「ひゃああああああんっ!?」
飛び上がって振り向くにこの前には、捜し求めた相手の姿。
「あ、あいん! いったい今までどこ行ってたのっ!!」
ひと月ほど前に『あいん』と仮に名付けられた、金髪碧眼傍若無人諸行無常の超美少女。自他共に認める神さまは悪びれもせず微笑を浮かべていた。
「我、探検してた」
簡潔な言葉だけど、その意味まではちょっと測りかねた。
「たんけんー? 一か月もウチに暮らしてて、今さら珍しがるような名所旧跡なんかあるもんかしら」
もっとも、元からこの神社にさして見るべきところはないけれど。そこまで言うときっと