ななかさんは現実
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ななかさんは現実
鮫島くらげ
イラスト 双龍
目次
序章
第一話 ななかさんは現実
第二話 千比呂ゲヱム
第三話 生き恥のステージ
終章
あとがき
序章
「わたし、着やせするんだねって、よく言われるんです」
いま俺はビーチパラソルの下で、水着姿のとんでもない美少女と向かい合っている。
「ねえ拓也さん、着やせってどういう意味なんですか?」
「へ……?」
「わたし、わからないんです。どういう意味なのか教えてほしいんです」
ここは常夏の楽園だ。ざざーん、ざざーん。足もとには一面の白い砂。抜けるような青空の下でソーダ色の海が陽光をまぶしく照り返してる。
美少女の名は、ななかさん。
言いたいことはいろいろあるが、とりあえず高校生とは思えない着やせっぷりだ。白ビキニ。椅子に座ってそのビキニより生白い脚をおしゃまに組みながら、テーブルに肘をついてストローをくわえてる。レモンスライスのささったジュースからストローは二本生えているが、俺にはまだそれをくわえる心の準備ができてない。
「あー、着やせの意味は、服を着てるとやせて見えるってことだと思うんだが……」
「そうなんですか!」
ななかさんはびっくりしたように目を大きくして、口に手を当ててうつむく。
「わたし、傷ついちゃいます……」
「え。な、なんで?」
「だって服を着てるとき、やせて見えるってことなんでしょう? それって実際は太ってるってことじゃないですか。……脱ぎぶとり! えーん。わたし太ってなんかないですぅ。これでも大好きなケーキとか控えてるんですよぅ?」
「あ、ああ」
なるほど。たしかにそういう意味にとらえられなくもないな。
「ち、ちがうんだ。そうじゃねえ。着やせっていうのはそういう悪い意味じゃなくてだな。なんて言ったらいいのか。えーっと、そのぉ」
「わたし、絶対太ってなんかないです。拓也さん、さわって確かめてください!」
「は……?」
いまなんとおっしゃいましたか。
「さわって確かめてください、拓也さん。どうぞですっ」
えいっ。そう言って両手を前で組み、きわどい前傾姿勢になりながら、俺のほうに身を乗り出してくるななかさん。
「ち、ちょっとっ?」
お、おおお俺は太ってるなんてひとことも言ってないんだが!
「ご確認