獅子姫に好機はない! 2
挿画:庄名泉石
デザイン:高橋忠彦(KOMEWORKS)
序章
窓から射しこむ朝の陽光は、部屋を明るく照らしだした。
張りつめた冬の寒さが、光の当たる部分だけ、ふわっとやわらぐ。
一階のキッチンから、香ばしいトーストのにおいがただよってくる、優雅な朝だ。
「おはようございます、ご主人さま」
貞淑な印象を与える紺色のワンピースに、フリルの付いた白いエプロン、艶やかな栗色の髪を飾るカチューシャ。
その美しいアイスブルーの双眸が、俺をのぞきこんでいた。
緊張しているのか、雪白の頬は薄桃色に染まって、形のいい眉は八の字を描いている。
「おはよう、レオナ」
「ちょ、朝食の準備ができておりますので、着替えをすませたら、ダイニングへいらしてくださいっ」
メイド服を着た少女――レオナ=ブリュンヒルト――は、つっかえながら言って、そそくさと部屋を出ていった。
俺はベッドから出て、彼女に言われたとおりに制服に着替えた。
洗面所で顔を洗う。
十二月の水は、氷のように冷たくて、一発で目が覚めた。
夢を見ているわけではない。
居間に下りると、ダイニングテーブルで銀髪の少女がイチゴジャムをたっぷりと塗ったトーストを片手に、経済新聞を広げていた。
「ふむ。統治者が代わってから、アールヴヘイムの株価がうなぎ登りね……今からでも買っておくべきかしら……」
度の入っていないだてメガネが、よく似合っている。
「おはよう、フレイヤ」
声をかけると、フレイヤ=ヴィノグラードは新聞から顔をあげて、くすりと笑った。
「おはよう、ジン。お寝坊さんね……先に朝ご飯いただいてるわよ」
俺は自分の席にすわりながら、リモコンでテレビの電源を入れた。
画面には、ブロンドの髪の少女とニホンの総理大臣が握手をしている様子が、映っていた。
『――政変が起きたばかりのアールヴヘイムですが、昨日、首相官邸で、鷹山首相と新王女のエアリエル姫の会談がおこなわれました。今後いっそう両国の協調を高め、これまでどおり二つの世界の交流を進めていくという方針を確認し――』
ブロンドの髪をツインテールにした少女がクローズアップされる。
ピンと立った切れ長の耳は、妖精族の特徴だ。
余裕と優美さをたた