アフターブラック2
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口絵・本文イラスト/ファルまろ
デザイン/百足屋ユウコ+モンマ蚕(ムシカゴグラフィクス)
編集/庄司智
家族とはなんだろうか。
簡単な定義付けとしては、血縁関係があったら、それは家族なのだろう。血の繫がり。遺伝子の繫がり。普段生きてる上ではあまり意識しないけれど、それがあれば家族だ。
でも、じゃあ──。
『あの子の母親になれて良かったと、今でも思ってるよ』
血の繫がりがない幽花と彼女は、家族ではなかったのだろうか。
そりゃあ事実だけ言ってしまえば、他人が他人を預かり、育てただけだ。あまりしたくもない『もしも』の話だけど、彼女じゃなくても幽花を育てることはできたんだろう。
……ただ、それでも。
幽花の隣に彼女がいた事実は、変わらない。
家族を失った幽花にそっと寄り添い、支え、親の代わりを務めた。例え他人だとしても。代替だとしても。偽物だとしても。その真実だけは、幽花の心に在り続けるだろう。
本物じゃなくても、きっと親にはなれる。
結局は意識の問題なんだ。親であろうとしたか。親として慕ったのか。そこに血縁的繫がりはいらない。ただお互いに、その手を差し出し──差し出された手を握り返すことが、大切なのだと思う。他人同士で心の手を繫ぐことが、家族になるための最初だと思うんだ。
──だから、俺は願う。
「さ、パパ! 早くおうちに帰ろ!」
俺が名付けた彼女と、そうなれる未来を。
サキュバスの娘、リズベラ。美しいピンク色の髪をした、可愛らしい悪魔の子。
偽物でいい。代替だっていい。それでも、俺は──。
彼女の父親になることを、選んだんだから。
「ん、そうだな……今日は特に用事もないし、さっさと帰るか」