サキちゃんと天然さん
小学館eBooks
サキちゃんと天然さん
陸 凡鳥
イラスト 連(むらじ)
目次
オープニング 前説に代えまして
一笑 サキちゃん、数寄猫町に立つ
二笑 壁の花ですが、何か?
三笑 サキちゃん/ステイナイト
四笑 学校に移行!
五笑 体育館裏って言葉だけでどきどきする。それが青春
六笑 試合の前日練習しすぎて、本番しんどい
本日のオチ
あとせつ
オープニング 前説に代えまして
暗い吹雪の夜でした。
とある町の、とある一軒家。
これといった特徴のない家は、その日、修羅場を迎えていました。
玄関の上がり口には、数人の男たちが詰めかけていました。いずれも黒服に身を包んだ、悪そうな顔ばかり。狭い玄関で、押し問答の最中です。
「さあ、こっちだ。早く来い! ちくしょう、手間をかけやがる!」
「おねげえでございます! どうかその子だけは! その子だけはぁ!」
男たちに取りすがるのは、みすぼらしい身なりをした中年の男性でした。
彼の視線の先には、ひとりの少女がいます。見たところ十代の半ばほど。怖そうな男たちに凄まれ生きた心地もしないのか、声も上げません。
黒服たちは、少女を引っ立てようとしているようでした。少女の父親らしき男は、そうはさせまいと、涙ながらに訴え続けているのです。
そんな心を打つ場面へ、割りこむ怒声。
「ダメだダメだ! 今度ばかりはもう待てないぞ!」
そう切り捨てたのは、髪の毛を逆立てた青年でした。ガラの悪いランチコートを着こなし、一座の先頭に立つ様子は、若いながらも偉そう。
「そもそも、あんたが借りたモンを返さないのが悪いんだ。娘のことは諦めるんだな」
どうやら少女は、借金のカタに取り上げられようとしている模様。これはピンチだ。
父親は、なおも食いさがります。
「お金なら必ず払います! だから娘は……」
「そんなこと言って、返した試しがないだろう。こっちはもう、堪忍袋の緒が切れたんだ。これ以上引き延ばしてたら、俺が姉ちゃんに殺されちまわあ!」
「いっそその方向でどうでしょう?」
「どうもこうもねえよ! そこまでお人好しじゃないよ俺! あんたがそんなだから、こいつもろくな育ちかたしないんだ!」
「「いっしょにするな!」」
親子から同時に声が上がりましたが、青年は聞こうとしま