コピーフェイスとカウンターガール
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コピーフェイスとカウンターガール
仮名堂アレ
イラスト 博
目次
序章
第一章 咳をしても一人
第二章 早川早苗
第三章 早川早希
第四章 虚無への供物
第五章 親族会議
第六章 代理デート
第七章 アイデンティファイ
終章
あとがき
序章
「あ、それ飲まないのならもらうねー」
彼女は返事も聞かずに僕の手からコーラを奪うと、グイグイと一気に半分ほど飲み下した。
「っはぁー。やっぱり飲み物といったらこれに限るよねー。黒い炭酸砂糖水、最高ぉー」
彼女はそれから思いだしたように人差し指をピンと立てた。
「あー、そうだ。東京に着いた直後の話ってまだしてなかったんだよねー。いやー、あれは酷かった。そして凄かったぞー。まずね、ミサイルの被害を受けた」
「ミ、ミサイル?」
「そう。まず東京駅に着いてそれから電車に乗ったわけよー。あの一枚切符を買えばいつまでも延々と回っていられるやつね。で、あたしが行こうとしていた駅は東京駅から右回りでちょっと進んだところだったんだなー。なのであたしは迷わず左へ回るやつに乗ったわけ」
「ど、どうしてですか?」
「せっかく着いた東京だよ。これからあたしのホームになる東京だよ。せっかくだから東京という街を満喫してから下宿先へ向かおうと思ったわけよ。で、乗った。見た。回った。けれどもなぜか一向に着かないのね。流石のあたしもケゲンに思ったなー。それでほかの乗客の人に聞いてみたわけよ。乙女の恥をしのんでねー。すると驚愕の新事実発覚。あたしが下りようとしていた駅の一コ手前で、地下に埋まっていた不発弾処理のために電車が不通。いつの間にか折り返し運行に切り替わっていたのよー」
「えーと、つまり遠回りをした結果、さらに遠回りになってしまったってことですか?」
「そーいうこと。まったく、あまりの出来すぎた展開にあたしも笑ったよー。結局それからまたほぼ一周して、ようやく逆回りで目的地に到着。我ながらごくろーさまー、という次第だったわけー」
本来であればそれは笑って聞けることだったはずだが、今の僕にはそんな余裕はなかった。
「あれ? それにしても平良くん、なんだか浮かない顔をしているね。もしかしてこんな話は興味がないかなー?」
「い、いえ。そういうわけではないんですけど、今はなんとい