双剣使いの封呪結界 2
挿画:美弥月いつか
デザイン:高橋忠彦(KOMEWORKS)
序章
光の使徒と呼ばれる者たちによって異世界召喚の術式が各世界にばらまかれてから、しばし。
異世界カルラス=トゥラスで千丈一輝が冬峯久遠と出会ったばかりのころ。
その術式によってとある王国に召喚された日本人たちの一部は、謎の集団――のちに勇者の戦力を恐れた別の国の仕業と判明する――によって誘拐された。
そのなかには、久遠の妹、遙もいた。
「妹を取り戻すためにも、まずはちからをつけないと」
久遠はそういって、誰よりも積極的に戦いかたを学んだ。
剣の使いかた、魔法の習得、そして戦術。
召喚した国の全面的なバックアップを受けて、召喚された日本人たちの誰よりも強くなった。もともとのセンスもあったし、誰よりも意欲があったのだから当然といっていい。
しかし『勇者』で最強となった彼女は、まるで猫のように気まぐれだった。
「ちょっと滝に打たれてくる!」
といって山にこもり、熊よりも巨大なモンスターを退治してきた。
オーガという巨人族の侵攻に晒されていた山岳地帯の村を三つばかり救った、そのついでであるという。滝に打たれるとはなんだったのか。
このとき一輝は、久遠を追って山に入り、彼女を見つけ出すまでさんざんな目にあった。
こんなこともあった。
「あっちの方にいってみたい」
そのひとことで道をはずれ、森のなかを彷徨ったあげく別の国に流れつき、奴隷商人に襲われたところを返り討ちにした。
その奴隷商人には有力な商家のバックアップがあったようで、国を出るまで何度も襲撃を受けた。
ふたりはそのことごとくを退け、おおもとの商家に逆襲をかけて壊滅状態に追い込んだ。
ついでのように、その国の兵士ともやりあうこととなる。
半月ほど旅をした結果、奴隷として売られていた少年少女、あわせて二十人あまりを連れて帰国した。
「隣国といさかいを起こして、おまえたちはなんのつもりだ」
国境を守っていた将軍は激昂した。かろうじて戦いにならずに済んだのは、一輝がいきりたつ両者を必死でとりなしたからだ。
久遠は商会を襲撃して強奪した金で孤児院を設立し、彼女が救助した少年少女たちをそこに預けた。
彼女は最後まで、彼ら