最強ゲーマー、異世界にて実況プレイ中2
目次
序章
第一章
第二章
第三章
第四章
終章
番外編
人は何故戦うのだろうか? 何を考え、何を思って戦うのだろうか?
手垢のついたフレーズかもしれない。
今まで多くの人々が悩み、あるいはそれぞれの答えを出してきた問題だ。
俺の戦う理由なんてシンプルこの上ない。
戦う事は実に楽しい。手強い相手と戦う程心が躍る。
少々物騒な考え方かもしれないが、ゲーマーにとってはそう珍しくもない。
ただ動くだけの歯ごたえのないAIプログラムより、より高度な手応えのあるAIと戦いたい。
AIと戦うだけの1人用ゲームシングルゲームに飽きたら、インターネットで繫がった顔も知らない人間と多人数ゲームマルチゲームをして、手強い人間相手に戦いたい。
俺のような戦い、争うゲームを好むゲーマーの戦う理由なんてそんなものだ。
俺自身がシンプル過ぎるせいだろうか、たまに人に聞きたくなるんだ。
なぁ、お前は何の為に戦うんだ?とさ。
◇
日が沈み、人工の明かり一つ無い人里離れた土地。
月明かりだけが大地を照らし、荒野に落ちた岩や森の木々に影を作る頃―――
その荒野の一角、切り立った深い峡谷の底。
壁面から流れ落ちる小さな滝や、湧いた泉から溢れた水が自然と川を作る水の溢れる場所には、多くの苔や草が生い茂り、月明かりも満足に届かないはずの峡谷の底は、何種類かの苔や草が自ら発光し放つ、青や緑のぼんやりとした幻想的な光に包まれていた。
そんなファンタジー情緒溢れる風景の一角、幻想的な光景に沈むように建てられた1軒の小屋の中には熱気が満ちていた。
「お兄ちゃん、右から襲撃追加、数は3人、飛び道具付きだよ!」
「アンは前方の相手を頼む、飛び道具を先に黙らせてくる!」
扉1枚隔てた外の幻想的な光景に喧嘩を売るかのように、室内はスタンド式の蛍光灯によって明るく照らされ、声を上げている2人は部屋の隅に置かれた木製テーブルの上、横並びに置かれた液晶ディスプレイへ向かい、直接聞こえる声と耳元につけたヘッドセットのスピーカー越しに聞こえる声を2重に聞きながら、マウスとキーボードを忙しく操作していた。
1人は俺。この峡谷全体を領域とする第228迷宮、迷宮管理者。
迷宮管理者と