封神演戯 3
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目次
第11回 太乙真人、病を絶つ
第12回 妲己、新しいアルバムを完成させる
第13回 崑崙の仙人たち、聞仲と争う
第14回 聞仲、崑崙のために協力する。
附 太上老君、天の存在について話す
第15回 太公望たち、朝歌に再び攻め入る
終章
ダッシュエックス文庫DIGITAL
封神演戯3
森田季節
呂岳の船が崑崙にドッキングするのを太公望と楊戩は目撃した。いまいちシリアスさに欠けるパンダ模様の「趙公明号」である。
趙公明のものに見える船と呂岳のものに見える船、その二つの船に逆の仙人が乗っていた。単純な入れ替え作戦だが、奇襲を受けて慌てていた崑崙側にはそれが効いた。
結果として、病気をつかさどる仙人である呂岳にまんまと崑崙への侵入を許してしまったようなのだ。
「趙公明のバカは倒したけど、呂岳の策のほうにははまっちゃったわね」
楊戩の言葉にも少し力がない。
「プラス思考で行こうぜ。暗くなっても無意味だ」
「太公望、あなたが前向きって珍しいわね」
「実際、前向きに進むしかないだろ」
ちらっと後ろに目をやる。趙公明が乗っていた時間稼ぎの船が見えるだけだ。それから、すぐに前に向き直った。
「逃げる場所なんて、崑崙の仙人である俺たちにはないんだから」
「それもそうね……」
どうしても、楊戩の表情が暗くなりがちだ。
太公望もいかんともしがたい。不安を煽ってるわけじゃない。事実を見つめようとしているだけなのに、その事実が悲観的に過ぎる。
「心配することはないっス! 今頃、竜吉公主様が入念にウォーミングアップして敵の仙人を待ち構えてるっスよ!」
楽天家の乗騎が少しはバランスを保ってくれている。
「スープー、そりゃ無理だ。あの人、ウォーミングアップしたら、それで力尽きるから」
竜吉公主はたった三人しかいない崑崙の大幹部、堂上元老の一人だが、とにかく活動時間が短い。一分しか働けないのだ。一分動くと、五分休まないといけない。せめて、逆だったらいいのだが。
「まあ、竜吉公主はわかんないにしても、崑崙には元始天尊様もいるわ。持