異世界家族漂流記 不思議の島のエルザ
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ダッシュエックス文庫DIGITAL
異世界家族漂流記
不思議の島のエルザ
松 智洋
CONTENTS
序章
第一章 嵐の朝は
第二章 初めての異世界生活
第三章 止まない雨の中で
第四章 流刑島ラスト
第五章 流刑島の意味
第六章 流刑島の空
終章
僕の将来
清流大学附属高校一年 真城
もし、必ず「幸福」になれる方法があるとしたら、誰でもそれを求めると思う。
「幸福」というのはいつでも蜃気楼みたいに遠くに見えて、欲しいものを手に入れられれば、憧れる人の心を得られれば、多くの人の賞賛を浴びることができれば、たどり着ける気がする。
だけど思い返してみれば、小学生の時に見た中学生はとても立派に見えて、中学に入ればそれまでと違う新しい自分になれる気がしていたのに、中学一年生になった時に自分の前に見えたのは、またも一番下の学年になって先輩たちを見上げる現実だった。憧れた場所に、「幸福」は落ちていなかったのだ。達観する気もないけれど「幸福」なんてそんなものかもしれない。
でも、そこからの中学時代が楽しくなかったかというと、そうでもない。友達も少しはできたし、三年生になった時には陸上部で県大会にも出られた。
今、受験を終えて高校一年生になって、また一番下の学年からやり直さなければいけない状況になって、僕は少しがっかりすると同時に、ほんの少しやりがいを感じている。
次の目標ははっきりしている、目指す大学に合格して、父のような、他者に必要とされる人間になりたい。その先にあるのが「幸福」かは判らないけれど、二人の妹に恥ずかしくない兄であることができるような、そんな将来を手に入れられたら、自分の「幸福」は達成されるような気がしているから。
序章
〈漂流日誌十六日目〉
人生というのは、何があるか判らないものだ。
世界というのは基本的に理不尽の塊でできていて、自分の思い通りになることなんてほんの一握りだけだ。自分の手足すら、自分の思い通りに動くわけじゃない。小さい頃、お箸をきちんと持てるようになるまで何度も練習した経験がない人はいないと思う。そうやって、なんとかかんとかいろんなこと