ドラゴンライブ·オンライン
挿画:kauto
デザイン:高橋忠彦(KOMEWORKS)
序章
『プレイヤーの皆様へ
日頃、ドラゴンライブ・オンラインをご利用頂きありがとうございます。既にご存じかと思いますが、ドラゴンライブ・オンラインは本日午後六時をもちまして、全てのサービスを終了することとなりました。つきましては、これまでのご愛顧に感謝し、最後のイベントを実施したいと思います。内容は現地に着いてからのお楽しみ。開催場所や時間についての詳細はイベントページをご覧ください。多くのプレイヤーの参加をお待ちしております。
ドラゴンライブ・オンライン運営スタッフ一同』
「最後のイベント、ねぇ……」
公式サイトのトップにでかでかと掲載された告知を自室で眺めながら、樋口向陽はため息混じりにそう呟く。正式サービスを開始してからおよそ五ヶ月間、イベントらしいイベントなどほとんど企画してこなかったくせに、最後とは片腹痛い。最初で最後、の間違いだろう。
他にも、言いたいことは色々ある。
テスト段階からコンテンツの少なさが指摘されていたにもかかわらず、アップデートはバグの修正やバランス調整ばかりで、ロクなイベントが追加されなかったとか。有料アイテムであるアバターのコスチュームは高価な割にデザインがダサいとか。レベル上げがマゾいくせに、ステータス振りや職業選択のやり直しはきかないとか。細かいところを上げればきりがない。
そういった点が全く改善されずに五ヶ月も放置されていたのだから、運営スタッフは全員やる気がないか、あるいはとてつもないバカかのどちらかだろう。
……まぁ、もっとも。一番のバカは、そんなドラゴンライブ・オンラインを毎日、夢中になってプレイしていた向陽自身なのかもしれないが。
「ここまで来たら、最後まで付き合うか」
手にしていたスマートフォンを机に置き、引き出しの中から両目をすっぽりと覆う銀色のバイザーとコントローラーを取り出す。バイザーを装着し、電源を入れると、ほどなくして画面の端から照射されたレーザー光が『REVOLIA2011』と白文字を描き、次いで水色の背景にいくつかのアイコンが配置されたシンプルなデスクトップ画面が視界一杯に広がった。
「ドラゴンライブ・オンライン起動」
バイザーに内蔵されたマイクが向陽の声を拾い上