リーングラードの学び舎より 3
目次
序章
第一章
第二章
第三章
第四章
序章
今日は参礼日。古王リスリアが神への感謝として設けられた神と人民のための休日です。
麗らかで心地よい昼前。穏やかな風が足下の草を揺らし、夏前の穏やかな太陽が草花に恵みを降り注ぐ、人にも自然にも優しい時間と言えるでしょう。
その中で自分は静かに空を仰いでいました。
この穏やかなる世界でただ一つ、問題があるとしたら――
「なんで仕事しているんでしょうね?」
――少し大きめの木からぶら下がった黒板。適当に並べたテーブル。室内運動場から見て、ほんの少し隣にある拓けた自然の中に揃えられた勉強空間。シチュエーションだけ見たら素敵な青空教室ですよ、えぇ。
この全て、自分が用意しました。朝一から頑張りました。
学び舎で余っている机を見つけては運び、椅子は各教室から。黒板がないことに気づいて倉庫で眠っていた黒板を運び出し、穴を開けてぶら下げられるようにし、発注していた教材を揃えて、そろそろやってくる生徒たちを迎えるまでに終わらせなければならなかったので全行程で焦りました。
なんで休日に仕事しようと思ったのか……、もはや狂気の沙汰ですよ。
思い返せばエリエス君の『術式具の作り方を教えて欲しい』から始まったことでした。
とはいえ生徒の向学意欲を責めるわけにもいきません。最終的に承諾したのも自分です。
ついでだからと全生徒に術式具の部活動をやりますよ、と宣伝してしまったのも問題でした。そのときに参加名簿を取っていなかったせいで正確な人数がわからず、結局最大数が来るものと仮定して準備しました。余計に面倒なだけでした。迂闊すぎて、いえ、純粋に部活動を始める前より忙しすぎて忘れていました。
教職の業の深さに空を見上げながら、自分は発端ともなったあの日の夜を思い返していました。
第一章
「クリスティーナ君にマッフル君。もう下校時間は過ぎていますよ。管理人さんも心配するでしょうに、一体こんな時間にどうしたんですか? 先生たちは生……ではなく色々、処理に忙しいのでこのまま回れ右して部屋に戻って眠ってもらえると良い感じに助かりますが、そうはいかないですよね、そうですよね」
「言ってることはわかるんだけど、なんか先生、変だよ」
戦闘の緊