聖樹の国の禁呪使い 5
目次
序章
第一章 遭遇
第二章 宝石の煌めき
第三章 第五禁呪と脅威の響き
幕間 かくて最後の幕は上がる
第四章 わたしの王子さま
番外編 第6院
終章
イラスト/〆鯖コハダ
序章
「クロヒコ様、その……どうかされましたか?」
ベシュガムとの戦いを終え、次なる戦いへの決意を固めていた俺に、ミアさんが気遣わしげに声をかけてきた。
「え?」
「なんだか、怖いお顔をされていたので」
不安げだったミアさんが取り繕うような笑みを浮かべ、両手を打ち合わせる。
「あ、でもそうですよね!? むしろこんな時だからこそ、その……戦意を高めるのは当然のことですよね!?」
いけない。
セシリーさんたちを助けたいと思う気持ちが顔に出過ぎたせいか、ミアさんを怖がらせてしまったらしい。
「あの……怖がらせたならすみませんでした。気持ちが焦って、つい余裕のない感じになってしまって」
「いえ、わたくしこそ出過ぎた物言いを……クロヒコ様がお優しい方なのは、十分わかっておりますのに。妙なことを口走ってしまい、申し訳ございませんでした」
「あ、謝らないでくださいよっ」
ふふ、とミアさんが笑顔になる。
「ほら、やっぱりお優しいです」
この嬉しそうなミアさんの笑顔には、いつも癒される。
さて……まずはセシリーさんの居場所か。
「マキナさん」
「何?」
「《晶羊亭》って、以前俺たちが二人で食事をした店ですよね?」
俺が尋ねると、マキナさんは何かを察した表情になった。
「つまり今日、セシリー嬢がそこに?」
俺は頷く。
ふむ、とマキナさんが小さな顎に拳を添える。
「あそこからだと学園より避難地区の方が近いわね。ガイデン様が一緒なら……一度アークライト家の屋敷に立ち寄ってソエル・アークライトを連れ出してから、避難地区か城へ向かう確率が高いと思うけれど」
晶羊亭は貴族地区にある。
そこからだと城や聖樹、避難地区が近い。
城には、キュリエさんがいる可能性が高い。
聖樹騎士団が敗れたという情報が伝わっているとすれば、北門へ向かった可能性は低いと考えていいだろう。その場合、キュリエさんなら北門を目指さず、セシリーさんとの合流を試みるのでは