文句の付けようがないラブコメ 5
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Contents
第十一章
第十二章
第十三章
第十四章
第十五章
神が生まれる前のことⅠ
ダッシュエックス文庫DIGITAL
文句の付けようがないラブコメ 5
鈴木大輔
第十一章
九十九機関について桐島ハルコは考え続けている。
†
九十九機関は世界を守る組織である。
と、少なくとも『世の中』ではそういうことになっている。もちろん彼らは表舞台に出てくることはない組織であり、ほとんどの人々はその存在すら認知することはないが。しかし彼らの存在を知る人間にとって、彼らはやはり〝世界を守る組織〟なのだ。
それは確かである。
確かであるはずだ。
ずっとハルコはそう思ってきたし、何度検証しても結論は同じである。
「ええまったく。結論は同じです。どう考えても」
だが彼女の直感はその結論に、わずかなほころびの気配を感じていた。
やはりおかしくはないだろうか?
九十九機関は個々の構成員が独立して動き、それでいて統一された意識の元で巧緻に連動することが可能な、いわばアメーバや粘菌に似た組織であり、同時に組織の体を成さない組織であり、ゆえに特異性なり独立性なりを保てている。組織の全貌を知るものは組織の上位者においてすら皆無であり、あのおチヨですらすべてを把握するのは不可能だ。
……と、いうことになっている。
理屈はわかる。
理論上ありうる話、にも思える。
だが本当に?
本当にそんなもの存在しうるのか?
アメーバや粘菌に似た組織とはいうが、あくまでも似ているだけであって、生物の免疫機能そのものではない。人間ひとりひとりで構成された組織が、いかなる洗脳なり強制なりを施されたとしても、あたかも機械のごとく精密にひとつの目的を果たし続けることなど、本当に可能なのだろうか?
「無理でしょう」
そう断じざるを得ない。
九十九機関というモノは確かに存在するのだろう。ほかならぬハルコの兄、桐島ユウキがその一員だ。天敵である小岩井クルミもまた所属し、活動している。もちろんあのいけ好かないメイドもだ。幼少の頃に兄をスカウトしにきた男もまた、九十九機関の末席に連