灰と幻想のグリムガル level.7 彼方の虹
イラスト/白井鋭利
「なふしゅべらっ、とぶろっ、ふらぐらしゅらっ、ぷらぷらぶりょっ」
「あなぶしょっ、ふぁかなかなっ、ばらうぁらふれにょっ、くらこしょっ」
「かちゃびゅりょほっ、きゃぱしゃっ、ちゃぱっ、りゅばりゃぶりゃっ、ほこしょっ」
青い光がこぼれる岩壁の穴、穴、穴。この共同住居フラツトにいったい何匹のグレムリンが棲んでいるのか。百匹? 千匹? もしかして万単位? 蝙蝠とゴブリンを掛け合わせたようなあの生き物は、基本的に人畜無害だ。わかっていても多少は怖い。もし何かの間違いで連中が襲いかかってきたら、ひとたまりもないわけだし。
共同住居フラツトを抜けると、その先は卵倉ストレージだった。卵倉ストレージの構造は単純だ。一本道の両側にグレムリンたちが卵を産みつける横長の部屋が並ぶ。卵には用がないので、それらの部屋を無視して一本道を進めばいい。――進んでいい、のかな……?
ハルヒロはランタ、クザク、ユメ、シホル、メリイの姿を何度も何回も確認しながら、このまま進むべきなのか、引き返したほうがいいんじゃないのかと自問自答していた。いや、ひたすら自問するだけで、自答はしていない。答えなんか、わかんねーよ。
前を行く女王様とその従者の足どりは、慎重だが淀みない。従者ノノが持つランタンの明かりが、ララ女王様の大胆で極端な肢体を照らしだしている。
まったく、そこまで女性的な部位を強調したり、見えてはいけない箇所をぎりぎり外して露出したりしなくてもいいのに。見たいわけでは決してない。でも、見てしまう。見せたがりなのか。見せることによる様々な効果を狙っているのかもしれない。
白髪で顔の下半分を黒いマスクで覆っているノノは無口だ。というか、ハルヒロはまだ一度も彼の声を聞いていない。休憩時、ノノはララの椅子になる。何なんだかね……。
控えめに言っても、変な二人組だ。
腕は立つ。恐ろしく。頼りにはなる。ただ、頼りにしていいのかどうか。微妙なところだ。迂闊に信用すると、足許を見られてえらい目に遭いそうな気がする。
やがて卵倉ストレージは終わった。その先は本当の一本道だ。道は緩やかに右へカーブし、突然、急角度で右に折れた。突き当たりが丁字路になっている。ハルヒロは既視感を覚えた。ワンダーホールから卵倉ストレージに通じる道と瓜二