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作者:ひなた華月,笹森トモエ
类型:少年向 日文
出版:2015-12-02(讲谈社)
价格:¥594 原版
文库:讲谈社轻小说文库
丛书:雛菊こころのブレイクタイム(1)
代购:lumagic.taobao.com
雛菊こころのブレイクタイム1 口絵・本文イラスト/笹森トモエ デザイン/ムシカゴグラフィクス Prologue 忘れられない思い出 『お客様には、上質な時間とコーヒーを』  この言葉は、僕、小田伊莉也の生まれ育った喫茶店『のいちご』の謳い文句である。  僕は、この言葉が好きだった。  なぜなら、その言葉を父さんが口にするたびに、僕はあの日のことを思い出すからだ。  あれは、僕が中学生になったころ。  そのころの僕は、やっと父さんからドリップコーヒーの淹れ方を教わったところで、抽出時間の調整、理想的な湯柱をつくるだけでも一苦労の有り様だった。それでも僕は、父さんのように美味しいコーヒーを淹れることができる人間になろうと努力した。  一杯のコーヒーだけでお客さんを笑顔にさせることができる凄い人が、僕の父さんなのだと、小さいころからずっと憧れの存在だった。  このお店に来る常連さんは、一人で本を読むために、買い物終わりの休憩のために、仕事帰りの一息のために、理由はまちまちだけど、僕の父さんのコーヒーを求めてやってくる。父さんの淹れたコーヒーは、まさに上質な時間を提供するために必要不可欠な飲み物だ。そして、お客さんは必ず、笑顔になってこの店を後にするのだ。  僕はそんな父さんの姿がカッコいいと思ったし、何より僕も、誰かを笑顔にさせることができるような人間になりたかった。  もちろん、コーヒーを美味しく淹れるだけじゃ、お客さんを笑顔にすることはできないかもしれないし、父さんのような人になれるとは限らない事は重々承知している。だけど、僕にとっては父さんのような人になるための大切なステップなのだ。  そして、試行錯誤の末、ようやく父さんから及第点をもらい、僕は初めて自分で淹れたコーヒーをお客さんに提供することになった。  注文をしてくれたのは、三人の親子のお客さんだった。  カウンターの奥でコーヒーを淹れている間も、何だかその親子にずっと見られているような気がして、意識すればするほど、緊張で手が震えそうになる。  それでも、どうにか上手く、二人分のコーヒーを淹れることができた。  僕がテーブル席までコーヒーカップを二つ、オレンジジュースの入ったグラスを一つ持っていくと、黒髪の母親らしき人が珍しそうに僕を見ながら軽く会釈してくれて、隣に座っていた小学生くらいの女の子が「ありがと