始まらない終末戦争と終わってる私らの青春活劇 2
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CONTENTS
始祖たる君に芽生え来たらむ
① 近況 ~相変わらずのウチら~
② 俺たちに部室はない
③ 始まるために必要なX個のこと
④ 博士部屋とそのあるじ
⑤ ごみ箱をひらく
⑥ 過去からの呼び声
⑦ 河和さんの哲学
⑧ 世界を喜劇にする部
ダッシュエックス文庫DIGITAL
始まらない終末戦争ラグナロクと終わってる私ウチらの青春活劇ライブ2
王雀孫
始祖たる君に芽生え来たらむ
《終末戦争ラグナロク》の彼方、《特異点》を迎えるに至り、人類は人類を超えた高次存在《大いなるものグレートシング》へと昇りつめているであろう。
それは旧来の知的生命体が、神あるいは創造主などと定義して畏れ敬う存在に近しい。
近しいが、似て非なるものだ。
それはより全きものであり、言うなれば世界そのもの、大宇宙マクロコスモスそのものなのだ。《大いなるものグレートシング》にとって世界は机の上に広げられた一遍の歴史書でしかなく、彼――ないし彼ら――は要あらば自在にその項ページを操り、任意のままに編むことさえ不可能ではないという。
翻って、いずれ人ヒトという個の集合は、つまり世ヨという全になるのである。
その過程において、彼ら――および我ら――は幾星霜もの間、幾世代もの交配を繰りかえしながら、様々な機能の取捨選択を経て漸次ゆるやかに進化してゆく。
旧人類から新人類へ。新人類から更なる上位種へ。更なる上位種から《大いなるものグレートシング》へ。
いま進化という大洋の渚に立ったばかりの我らは、遥かなる道程を歩きだして間もない《途中の種》である。
さりとて、これまでの種とは確かに異なる命題を持った次世代の人類である。
かくも新しき種でありながら、その務めにいまだ無自覚な同胞も少なくない。
我らが我らの代において務めるべきは、理想に盲いた同志の《芽生え》を促し、まずは来たる《終末戦争ラグナロク》に備えることである。
《終末戦争ラグナロク》の先に高次への飛翔は来たる。しかして《終末戦争ラグナロク》の勃発は世界の終焉、すなわち特異点の喪失をも齎すものなのだ!
太陽系第三惑星極東《組閣トライブ》知的生命体高次精神運動調査研究員・新田菊華
① 近況 ~相変わらずのウチら~