MONUMENT あるいは自分自身の怪物
この本は縦書きでレイアウトされています。
CONTENTS
Prologue
1・Call me BORIS
2・Admission
3・Time to die
4・Conflict
5・Hideout
6・Monument
7・End my story
Epilogue
ダッシュエックス文庫DIGITAL
MONUMENTモニュメント
あるいは自分自身の怪物
滝川廉治
What are heavy? sea-sand and sorrow:
What are brief? today and tomorrow:
What are frail? Spring blossoms and youth:
What are deep? the ocean and truth.
-Christina Rossetti-
重いものは? 海の砂と嘆き。
短いものは? 今日と明日。
儚いものは? 春の花々と若さ。
深いものは? 大海と真実。
―クリスティーナ・ロセッティ―
※ ※ ※
人類が火を熾すよりも先に、発火の魔術に目覚めた世界。
あらゆる理論や法則に、応用として個人の魔力資質の差異が組み込まれている世界。
ソクラテスもプラトンも、ベートーヴェンもモーツァルトも、フロイトもユングも、ヒトラーもスターリンも、手塚治虫も藤子・Fエフ・不二雄も存在していたけれど、魔法がある世界。
不思議な力が存在しても、結局は似たような歴史を歩んできた世界の物語。
※ ※ ※
俺の事はボリスと呼んでもらいたい。とりえあずこれが、俺にとって自分の名前だと認められるギリギリのものだ。さしあたっては。
この名前の由来はボリス・カーロフという、かの有名な『フランケンシュタインの怪物』を演じた俳優から、らしい。あまり愉快な気持ちのする由来ではないが、それでも困った事に俺に付けられた数々の異名の中では、これだけが唯一マシなものだ。他はどれもこれもひどいもので、そもそも人名として適当でないものばかりだ。
断っておくが、俺は一応まともな人間だ。両親の顔も自分の本名も、本当の国籍も誕生日も知らないだけで、別に人造人間というわけじゃない。
この名前を貰うまで俺の名前はただの数字だった。物心がつい