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作者:手島史詞,八坂ミナト
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2014-06-20(一迅社)
价格:¥594 原版
文库:一迅社文库
丛书:赫竜王の盟約騎士(1)
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赫竜王の盟約騎士 1 挿画:八坂ミナト 口絵漫画:あおなまさお デザイン:木緒なち(KOMEWORKS) 高橋忠彦(KOMEWORKS) 第一章 竜を憎み、狩る 「う、うああああこっちに来たぞ、逃げろおっ!」  男子生徒の悲鳴が上がり、ジルは小さく舌打ちを漏らした。 ――ど素人が……。  それまでなんとか踏みこたえていた生徒たちも後ずさり、逃亡する者まで現れる。  彼らの前には、一体の異形がたたずんでいた。  見上げるほどに巨大なそれは、全長で五プロペに及ぶだろうか。巨体を覆うのは、熱した鉄のような赤の鱗だ。子馬くらいひと呑みにできそうな大きな顎の奥には、鋭く尖った牙がびっしりと並んでいる。  竜だ。  翼はなく、額からは斧のような突起じみた角が生えている。  振り下ろされた前足からは杭のような太い爪が伸びて、その下で赤い血だまりが広がっていた。  不用意に近づいた生徒がひとり、踏みつぶされたのだ。  ジルたちが制止する間もなかった。  ほんの数秒前まで意気揚々と声を上げていた仲間のひとりが、ものを言わぬ肉塊に変えられた。そこで生徒の大半は戦意を喪失していた。  逃げ惑うだけの生徒など敵対者ですらない。  餌だ。  狙う獲物を吟味するのか、あるいは娯楽としての狩猟を気取るのか、竜は縦に割れた金色の双眸を細めてそんな光景を見据える。 「くっ、どけよ!」  逃げようとする男子生徒のひとりが、すぐ隣の少女を突き倒す。 「――あ……っ、ま、待って、おいていかないで!」  派手に転倒した少女は声をあげるが、誰一人として見向きする者はいない。  誰かが食われれば、その分だけ遠くまで逃げられるのだ。当然の反応だろう。 「ひっ――」  そんな哀れな少女に、ギョロリと竜が目玉を向ける。  腰を抜かしたのか、足を痛めたのか、少女は地面でもがくだけで立ち上がることはできなかった。  声も出せずに震え上がる少女に、竜が大きな口を開いた。 ――このまま行くと、全滅か。  もう少し様子を見たかったが、ジルが諦めて短剣を抜いたときだった。 「〈クラウストラ〉――衝牙ヴイブラートス!」  ジルが動くより早く、飛び出す影があった。  竜の牙を止めるように、光でできた白い魔方陣が紡がれる。